鬼の夏休み14

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「このBBQパーティ、毎年恒例言うやっちゃけど、涼は今年、ちょうど準備しよるまずい時に帰ってきよって、公一さんがやる予定やったんを急遽、代わってん」
 涼はボストンH大大学院に留学中だという。
「前は業者呼んでやってもろてたらしいけど、あいつらに取り入ろういう女たちや、けしかけようって腹の親たちの魂胆が見え見えで、京助が嫌気がさしてついにこういう作戦に出たわけや」
「なるほど………」
 良太は妙に納得できた。
 モテるモテないより、こういう裕福な家に生まれるとそれなりに苦労もあるのだろう。
「大も最近、紫紀さんてより、京助のクローンみたいになってきたやろ?」
 大学生になったという大はこころなしかスキー合宿の時より背が伸びたようで、ほぼ京助と変わらないくらいだ。
「性格は似ても似つかない感じの真面目さですけどね」
 千雪は苦笑する。
「そのとおりやから、京助も甥っ子が心配なんちゃう?」
「そっか、次の次のCEOとか?」
「いや、それはわかれへんけどな、まあ、そないなことまで考えて大をターゲットにしてくる連中もいてるからな」
「何か、大変ですね~」
 いや、でかい家なんかに生まれなくてよかったと、良太はしみじみ思う。
「そうして、いつか相続争いとかで兄弟の妻や子を巻き込んで殺人事件が起こるわけや」
 一人頷く千雪は、「軽井沢、お坊ちゃま殺人事件、何かあとひとひねりほしいな」と、ブツブツ呟く。
「千雪さん……」
「せや、お坊ちゃまと言えば、工藤さんも、おぼっちゃまやってんな。意外なことに、藤原さん、工藤一族のこと知ってはって」
 これには良太も驚いた。
「そうなんすか?」
「横浜の古くから続いた名士で地主やったらしいで。土地柄、工藤さんの曾お祖父さんいう人は、若い頃貿易会社もやってはったて。奥さんも品のええ人で、お嬢さんがまたきれいなひとやったらしい」
「え、お嬢さんてひょっとして工藤さんのお母さんとか?」
「せやな、そのまた母親のことちゃうか? 藤原さん、身寄りがなかったところを綾小路の先代に引き取られて育った言うてはったし」
「えっ、じゃあ、中山組の先代の極妻?」
 良太はちょっと声を落とす。
 そういえば、伯父が組長、とは工藤がよく言うが、祖母の話はしたことがない。
「きれいやったけど、えろ、勝気な人やったらしい」
 ちょうどその時、工藤と紫紀の話が終わったらしく、「良太」と工藤が呼んだ。
「あ、はい!」
 良太は千雪に、あとで聞かせてください、と言いおくと、工藤のところに行った。
「俺はそろそろ帰るが、お前はまだいたければいいぞ? タクシーで帰るし」
「あ、いや、じゃあ、俺も帰ります」
 時間はあっという間に過ぎて、九時になろうとしていた。
「千雪さん、俺、帰りますけど、また話聞かせてください」
 良太は帰りがけ、千雪にこそっと言った。
「ええよ。明日はまた来るんやろ?」
 すると良太は眉を顰めた。
「まあ」
「ほな、服、買いに出た時でもどっかでお茶しよか」
「服、ですか……」
 はあ、とため息をついて、良太は「じゃあ、ラインします」と言った。
「あ、そうだ、さっきプリンとかお渡ししたんで食べてくださいね」
 別れ際、良太は千雪に伝えると、駐車場から車を回してくれた公一からキーを受け取って運転席に乗り込んだ。
 工藤が助手席に座ると、良太はそろそろとアクセルを踏む。
 藤原と公一が頭を下げて見送るのをバックミラーで見やりつつ、良太の運転するベンツは綾小路の別荘を後にした。
「今夜が若めのセレブとかセレブもどきとすると、明日の晩はもっと重々しい連中が来るんですよね?」
「だろうな」
「やっぱ俺も?」
 良太は一縷の望みをもって確認のために聞いた。
「苦手なものを克服するのが大人だろ」
 しれっと言う工藤に、「ちぇ、自分こそすぐ逃げだす癖に」とモソモソ良太は口にする。
「何だ?」
「いえ、別に」
 やっぱ俺も行くのか……。
「紫紀さんが知り合いの企業のCEOを紹介するとかって話だ」
「はあ、それはやっぱ行かないわけにはですよね、工藤さんは」
「ぜひお前にもって、話だったぞ?」
 その言葉に良太はうっと口を噤む。
 ほんとかよ? と良太は胡乱な顔でチラリと隣の男を見やる。

 


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