サンタもたまには恋をする8

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「じゃあ、なるべく早く書類は持ってきて。で、その高津くん、の番号は?」
「え…と、090の……」
 藤堂は手帳に番号をメモして顔を上げる。
「じゃ、俺、バイトがあるんで……」
 あきらかに逃げ出そうとするかのように、悠はドアへと向かった。
「ちょっと待った」
 藤堂はまたドアを開けた悠を呼び止めた。
「あとひと月しかない。バイトもいいが、こちらとしても企画という形で君の作品展をプロデュースするわけだ。お客様をお呼びするのに、いい加減な作品を並べるわけにはいかないからね」
「俺が、んな、いい加減なもん描くわけないだろ!」
 悠はまた精一杯藤堂にくってかかる。
「いい作品が出来たら、ギャラリーで買い取ることもないとはいえないからね」
 尊大に言い放った悠に、すかさず藤堂はそう言い返す。
 悠の瞳は大きく、肌の白さと対照的に真っ黒で、それは真っ直ぐ藤堂を見据えている。
 やっぱりアイちゃんが懸命に威嚇してるみたいだ。
 ちょっと心の中でほくそ笑む藤堂だが、一応表には出さない。
「あんたこそ、その言葉忘れるなよな! 失礼します!」
 バタン!
 ドアの閉まった勢いでギャラリーの空気が揺れる。
「藤堂さん面白がってますね? あの子からかって」
 悠が出て行くと、テーブルを片づけながら啓子が笑う。
「つつきがいがあるね、弾力性があって」
 藤堂はフフンと頷く。
 藤堂の頭の中ではキャンキャン訴えるアイちゃんにさらにイメージが重なっていく。
「まあ、とっても元気でよろしいこと。楽しい作品展になりそうね」
 にこにこと美保子が苦労のない台詞を口にする。
「じゃ、五十嵐くんのポスターや案内状は準備しておきますからよろしくお願いします」
 藤堂は鼻歌でも出そうなほど心を弾ませてプラグインのオフィスに戻った。
「作品展の案内状ですか? いいですよ。ホームページに飽きてきたとこだから」
 早速案内状のデザインを頼まれた浩輔は藤堂を見て、「何か、楽しそうですね」と言う。
「まあね、この作品描いた学生が、なかなか面白いんだ。作品もいいよ、さっきデータをサーバに落としたから、見てみな」
「あ、これですか、ああ、いいですね、ボッティチェルリを思わせる空気感? 技術もかなりハイレベル。このブルー、いいなあ」
 ファイルを開いて浩輔も納得する。
「だろう?」
 浩輔の言葉に、藤堂はまるで自分のことのように誇らしげに頷く。
 あれだけたきつければ、かなり負けず嫌いらしいし、きっといいものを創るに違いない。
 早く絵を見たい。
 あの蒼が、何だろう、ひどく気になる。
 あの真っ直ぐな黒い瞳の見つめる先が……。

 マミに振られた傷心を忘れさせてくれる、五十嵐悠という興味をそそられる存在が現れた藤堂に、またしても災難が降りかかったのは、あちこちで目や口をポッカリあけたカボチャが今にも語り掛けてきそうな夜のことだった。
「浩輔ちゃん、こんな真夜中まで?」
「もう十二時かぁ。よし、この辺にしとくかな」
 オフィスに戻ると、ゼニアのスーツをさりげなく着こなす男は、少々疲れた様子でソファに腰を降ろした。
「今まで北国乳業の撮影ですか?」
「ああ、北国乳業の石頭どももあれなら文句言う余地はないさ。忘れないうちに請求書もまとめとかないと」
 クライアントからもやっとGOサインをもらってほっとしたところだ。
「達也は東京自動車の打ち合わせ?」
 深々とソファの背に寄り掛かると、藤堂はネクタイを緩めた。
「ええ、なんか最初からイメージキャラの長谷川美香に手を焼いてるみたいですよ」
「美香ねぇ、ご愁傷様だね、達也のヤツ」
 我侭女優と評判のその名前を聞いて、過去に経験のある藤堂はうんうんと頷いた。
「あ、そだ、この時間帯のスポットで、こないだやったネコ缶のCMやってたっけ」
 パソコンの電源を落とした浩輔が、最近会社で壁にドーンと取り付けた大型の液晶テレビをつける。
「ああ、浩輔ちゃんがプランニングからやったやつね」
「撮影は大変でしたけどねぇ」
「割と評判いいみたいじゃん。ニャンコもいい味出してるよ」
 藤堂も何の気なしにテレビに目を向ける。
『昨夜午後十一時三十分頃、渋谷区代官山で火事があり………』
 楽しげなCMのあと午前零時からの短いニュースが始まった。
 代官山、という聞きなれた地名に何気なく画面を見ていた藤堂は思わず目を見開く。
「藤堂さん! まさか、…………!」
「………アイちゃん………!!」
 叫ぶが早いか藤堂はオフィスを飛び出した。

 


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藤堂はネクタイを緩めた。
「ええ、なんか最初からイメージキャラの長谷川美香に手を焼いてるみたいですよ」
「美香ねぇ、ご愁傷様だね、達也のヤツ」
 我侭女優と評判のその名前を聞いて、過去に経験のある藤堂はうんうんと頷いた。
「あ、そだ、この時間帯のスポットで、こないだやったネコ缶のCMやってたっけ」
 パソコンの電源を落とした浩輔が、最近会社で壁にドーンと取り付けた大型の液晶テレビをつける。
「ああ、浩輔ちゃんがプランニングからやったやつね」
「撮影は大変でしたけどねぇ」
「割と評判いいみたいじゃん。ニャンコもいい味出してるよ」
 藤堂も何の気なしにテレビに目を向ける。
『昨夜午後十一時三十分頃、渋谷区代官山で火事があり………』
 楽しげなCMのあと午前零時からの短いニュースが始まった。
代官山、という聞きなれた地名に何気なく画面を見ていた藤堂は思わず目を見開く。
「藤堂さん! まさか、…………!」
「………アイちゃん………!!」
 叫ぶが早いか藤堂はオフィスを飛び出した。

 


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