「やあ、直ちゃん、……佐々木さん」
沢村は直子に手を引かれてやってきた佐々木を見とめると、すっと微笑みを浮かべたが、佐々木の方は沢村と目があった途端、視線をそらしてしまった。
「ねえ、藤堂さん、そちらのお二人ってモデルさん?」
万里子が藤堂に尋ねた。
「ああ、そうか、万里子さん、お二人とは初対面だったね、こちら、クリエイターの佐々木周平さんとアシスタントの池山直子さん。で、こちらは女優の小野万里子さん」
「え、知ってる! 業界じゃ有名な天才クリエイターって、うっそ、すごいお綺麗だからてっきりモデルさんかと! 今日来てよかった! 沢村選手にも会えたし!」
万里子は目を輝かせた。
「佐々木さん、工藤んとこの仕事ちょくちょくやってるって、言ってなかったっけ?」
ぼそりと俊一が言うのに、万里子は「聞いてない!」とまたぞろ内戦が勃発しそうな空気を「まあまあ」と藤堂が両手で抑えるような仕草をする。
「小野さんは工藤さんの事務所じゃないですよね?」
佐々木が尋ねた。
「ええ、最初ひとみさん経由で工藤さん紹介してもらって、私、工藤さんの事務所のタレント第一号なんです。そのあと独立して個人事務所を持ったんですけど」
「そうなんですか?」
「千雪さんの映画初めて作った頃?」
へえ、と認識を新たにした藤堂らの前から万里子の手を引いて俊一は新しい日本酒を開けているヤギこと下柳の方へ向かう。
その時またチャイムが鳴った。
「お疲れ~、良太ちゃん、仕事の方は大丈夫?」
迎えに出た藤堂が良太を連れて戻ってきた。
「ええ、まあ。遅くなりました。何かすんごいロケーションですね」
眼前に広がる夜景を見てポツリと呟いた良太を見つけたひとみが駆け寄って抱きしめる。
「遅いじゃないの、良太ちゃん!」
「……ひとみさん、結構飲んでますね?」
「やだ、こんなの序の口よ。良太ちゃんも飲もう!」
ひとみは明らかに酔っている。
いったいどれだけ飲んだんだ、と訝しむ良太に、下柳がテーブルにあったワインボトルを大げさに逆さにして見せた。
「すみません、ひとみさん、ちょっとあっちで休みましょう」
「なによ、須永! あんた生意気!」
須永が申し訳なさそうにそそくさとひとみの腕を取ってソファへと連れていく。
「どうぞ」
浩輔がシャンパンの入ったグラスを良太に差し出した。
「どうも、すみません、準備手伝えなくて」
「全然、大丈夫です。秋山さんがいろいろ手配して下さったので、お土産運ぶくらいで」
「あれ! 良太、あたしがやった衣装、どうしたのよ!」
そこへアスカがやってきて、早速文句をつける。
「ちゃんと着てますよ、スケルトンのTシャツは。もう、忙しくておちおち着替える暇がなくて。エレベータから降りたら工藤さんが、かぼちゃパーティなんかとっとと切りあげて戻れとかって電話で怒鳴るし」
全くあのオヤジと来た日には勝手なんだからな!
「工藤さん、大阪じゃなかったの?」
「早めに終わったんで、新幹線で戻ってきたらしいです」
「ふーん、相変わらず横暴!」
ぷんすか腕組みをしているアスカの後ろから、「良太ちゃん」と声をかけてきたのは直子だった。
「あ、直ちゃん、お疲れ」
直子はそのまま良太の腕を隅へと引っ張って行った。
「何かあった? 直ちゃん。佐々木さんと直ちゃん、ほんとベストカップルって感じだよね、すごく似合ってる二人とも」
「うーん、佐々木ちゃんは地がモデル体型だから、何着せても似合うから着せがいがあるのよ。あの性格じゃなきゃとっくにトップモデルだったかも」
「あの性格?」
「目立つの嫌いだから。でも、直のことすごく有難く思ってくれてて、直の頼みだとノーと言えないのよ。今回も最初沢村っちが迎えに行くことになってたんだけど、ハロウィンパーティなんかパスって断っちゃって、しょうがないから直がお願いって言ったら不承不承」
「よく連れだしたよね」
「うん~、でもさ、佐々木ちゃんがもし、このパーティ、佐々木ちゃんと沢村っちが会うために計画したってわかったら、怒るってより、悲しくなっちゃうかも。それでやっぱり沢村っちと別れるとか考えるかもって………」
良太は直子が言うこともわかる気がした。
「ごめん、沢村のバカが考えなしな発言するからこんなことに」
「佐々木ちゃん、植山の時もそうだったけど、みんなに迷惑かけたことすごい責任感じちゃって、それ以上に、あたしも往復ビンタだけじゃたんないくらい腹立ったけど、あの時沢村っちも植山殴っちゃったじゃない? 自分たちがつきあってることで、沢村っちがまたそういう事態になったりしたらって、それが怖いんだと思う」
いつも明るい直子がはあ、とため息をつくと、良太も伝染したように大きく息をついた。
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