恋ってウソだろ?!12

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 名刺………やっぱり、知らんうちにあの男に名刺渡したんやろか………
 またしても佐々木の思考は昨夜の男へと向かう。
 実際酔うとったし、顔もおぼろげ、何をやったかもおぼろげ、俺、あの男に何をしゃべったんや? まさか仕事上の機密っぽいことはしゃべってないよな。
 うろ覚えやから自信がない……。
「佐々木さん? どうかしました?」
 浩輔に顔を覗き込まれて、佐々木ははっと我に返る。
「あ、いや、何でも………」
 早速きんつばを嬉しそうにほおばる浩輔を見ると、佐々木も少し和んで笑みを浮かべた。
「あ、そうだ、広瀬さんも今こちらにくるって、たったさっき電話で」
 浩輔が言った。
「おや、良太ちゃんも? そりゃまた賑やかだねぇ」
 藤堂はまたにこにことお茶を飲む。
 プラグイン、ジャスト・エージェンシーともに人気タレントが所属する青山プロダクションとは取引があり、そこの社員である広瀬良太とも顔馴染みだ。
「すると、藤堂さんがこのプロジェクトの担当されるんですか?」
 当初の目的を思い出して、佐々木はたずねた。
「いや、担当は浩輔ちゃん」
「え?」
 浩輔イコール、デザイナーという図式が頭の中でできあがっている佐々木にとって、浩輔が営業担当とは意外な成り行きだった。
「はあ、実は昨日、河崎さんが、お前が持ってきたんだから、お前が自分の裁量で進めろって」
 ため息と一緒に、浩輔が言った。
「いや、ここのスタンスは一応そうなんですよ、自分の取ってきた仕事は自分でやるって。何せたかだか四人しかいませんし。第一、元は浩輔ちゃんも営業で十分鍛えられてますからね。まあ……実を言うと…」
 藤堂はちらり、と奥の河崎と三浦に目をやりながら、佐々木に顔を近づける。
「浩輔ちゃんにそう言い渡してから企画書読んで、佐々木さんと一緒にやる仕事だと気づいたらしくて、ちょっと後悔してるんですよ。あいつ、未だに佐々木さんのことライバル視してますからねぇ」
 つられて佐々木も河崎のいる奥に視線を移す。
 ハハハ、と浩輔が空笑いする。
 確かに河崎が何気に剣呑な目つきで自分を見ているようで、佐々木は何だか可笑しい。
「はあ、そんなわけで、頼りない担当ですみませんが、これ、企画書です」
 浩輔は打ち出したファイルを佐々木に差し出した。
「データなどの協力は惜しみませんし、時間の許す限り私もお手伝いしますよ。おや、噂をすれば、良太ちゃんだ」
 窓の外を見て、通りを歩いてくる青年を見とめた藤堂は、席を立ってまたキッチンに向かった。
「こんにちは、お邪魔します」
 息せき切ってオフィスにやってきた良太は佐々木を見つけて、「佐々木さん、夕べはどうも」と声をかける。
「お世話様です。こちらから伺わなくてはならなかったのに」
「いえ、ちょうど東洋商事からの帰りなんですよ」
 良太はトレンチコートを椅子に引っ掛け、佐々木の隣に座った。

 


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