恋ってウソだろ?!2

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 モデルや俳優を使ってCMや雑誌広告を創ったりする仕事の中で、下手をすると佐々木自身が誰よりその画像の中に納まるのが似合っていたりするわけで。
 特に冬など、ゆったりしたセーターでも着て、バーでグラスを傾けていたりすれば異様に画面にはまる。
 ちょっと長めのウエーブがかった柔らかな髪は自前だし、うるさそうにかき上げたりする仕草すら優雅で、自覚なしに周囲を魅惑する。
 だがしかし、いくら艶やかな姿にクラッときたからといって、ここで間違っても「お嬢さん、お一人ですか?」なんぞと声をかけたりしてはいけない。
「貴様、殴られたいんか?」
 虫の居所が悪ければ、そんな台詞とともに強烈な睨みをきかされるはめになるのだ。
 ただし年に一度あるかないかだが、いつもポジティブな佐々木にも、弱い自分が表面に出てくる時がある。
 たまたまそれが夕べのことだった。
 そんな時は大概、彼のために会社をひとつ作ってしまうほど、その才能も佐々木自身をも大切に保護してきたジャスト・エージェンシー社長の春日が酒の相手をしていたりするので、いつの間にか過ぎていくのだ。
 しかし昨夜は佐々木はひとりで、あちこちでパックリ口を開けたかぼちゃどもが、まるで自分をあざ笑っているように思えて動く気力さえなくなり、かろうじてエレベーターで高層階にあがると、そのフロアにあるバーに入ってウイスキーを何杯か開けた。
 原因はわかっている。
 久しぶりに浩輔に会ったせいだ。
 つい二年程前までは佐々木の部下であり、当時佐々木が振られた相手でもある。
 いやそのこと自体はそれほど佐々木がこだわっていたわけではなく、むしろ浩輔が佐々木の元を去ってからも元部下として温かく見守っているくらいなのだが、浩輔に去られたことによって、また更に佐々木の深いところの傷を逆撫でしてくれたわけだ。 
 昨夜、打ち合わせが終わって浩輔と別れてからだ、精神状態が急降下したのは。
 そんな佐々木にあの男が声をかけてきたのだ。
「そうや、妙に酔っ払ってしもて、部屋で飲みなおそう言うから、つい……………………」
 シャンパンやらワインやらガンガン飲んで、悪酔いしたことに気づいてシャワーを借りた、ことまでは思い出した。
 何だか妙にあの男とゲラゲラ笑ってたような気がするが。
 それから………どういうわけで、ああなったのか。
何となく残っているこの鈍痛は…………しっかりやられましたってことやろ…………?
 一生の不覚ってこのことか? 高校大学と男と寝たことがないわけじゃないが、バックは対象外だった。
 常に老若男女に言い寄られてきたものの、別れた妻を始めとして、付き合ったのは大抵ふんわりした可愛い子だったはずだ。

 


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