恋ってウソだろ?!50

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「………ええ加減にせぇや! あとになって野球やめたんは俺のせいやなんて言われても、俺には責任取られへん!」
「俺にとって何が大切かは俺が決めることだ。今までも、これからも」
 トモは語気を強めて言い切った。
「……強いんやな。俺はあかん。すぐいろいろ左右されるし、人の目も気になるし。何より、早よう可愛い嫁もろて、おかあちゃんを安心させなあかんね。せやから………」
 佐々木は思いつく言い訳を並べ立てた。
「佐々木さん、あんたはどうなんだ?」
「え………」
 不意を突かれて佐々木は戸惑う。
「あんたはほんとはどう思ってるんだ?」
「…やから、俺は……」
「これからそっち、行く!」
「アホ言いな! これ以上仕事の邪魔をしないでくれ。切るで……」
 佐々木は無理やり受話器を置いた。
「ったく………てんで傲慢なおぼっちゃんやんか! もうちょっと、大人やと思うとったのに」
 佐々木は呟いた。
「第一、そない簡単に野球やめるやなんて、言いなや」
 それでも、トモの思いは電話越しにもまっすぐに伝わってきた。
「………何で……、俺だけのトモでいてくれたらよかったのに………」
 思いがけず頬を伝う雫に佐々木は自分で驚いた。
「アホちゃうか、年やな、涙腺がおかしなっとる」
 髪をうるさそうにかきあげて、佐々木は無理やり笑う。
 トモの面影が強烈な勢いで、佐々木の脳裏を通り過ぎる。
「ほんま、ええ年して、俺は何やってんね………」
 拭い損ねた涙はひどく苦い味がした。
 

    

 
 二人分の弁当を買って十二時近くに戻ってきた直子は、濡れたコートを脱いで来客用のポールハンガーにかけ、自分のデスクに向かった。
「おかえり。雨、ひどかった?」
 佐々木は努めてさりげなく聞いた。
「ひどいって程でもないけどねぇ。しとしとって感じ?」
 直子はジャスト・エージェンシーの新年会は年明けの七日に決まったと言い、次には夜のパーティに行く時に着るドレスのことを楽しげに話し始めた。
 佐々木はキーボードを打つ手を休めて、直子に顔を向けてうっすらと微笑んでいたのだが、直子の話はところどころ聞き返さないと、忘れそうになった。
「………だから、佐々木ちゃんも今夜はおっきい襟のジャケットにしようって言ったの。ナオもやっぱりレースのミニのドレスにするから。D&Gでおそろでいいよね」
「ああ、うん、そうやね、あれ可愛いわ、直ちゃん」
 佐々木のこの先の人生にトモがいないとしても、こんな風に優しく時間は流れていくのだ。


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