「勝っちゃん、ちょっといいか?」
検診のあと動物たちを落ち着かせると、当番をのぞいてみんなそれぞれ散っていき、最後にユウを連れてボロいクラブハウスを出た勝浩に武人が声をかけた。
「レポートありますから、そんな時間ないですけど」
勝浩は硬い表情のまま武人を見た。
「じゃ、単刀直入に聞くが、いったい幸也と何があったんだ?」
「別に何も」
「何もなくて何でそうなる? せっかく山で仲直りして、二人ともいい感じだったじゃないか」
「仲直りって………」
勝浩は立ち止まるとちょっと笑う。
「仲直りしただけでよかったんじゃないかな、ほんとは」
「はあ?」
「多分、高校の先輩後輩ってだけでとどまっていればよかったんですよ」
「何言ってるんだよ」
「幸也さん、無理してた」
訝しげに問い返す武人に、勝浩は言った。
「俺が好きだって言ったから、きっと俺に対する罪悪感もあって、俺に合わせようとしてくれたけど、やっぱ無理があったんですよ」
「何がだよ、お前、奈央さんとこで志央が言ったことなんか真に受けるなよ。あいつはとっくにタラシ返上してるし、第一、あんだけ大事にされてたのに気づかなかった鈍感志央が何をかいわんやだ!」
言ってから武人はまずいと思ったが、あとの祭りというやつだ。
「志央さんだったら、幸也さんも無理をすることなんかなかったんだ。俺には志央さんにはなれない」
「バカ言ってんなよ、何でお前が志央になるんだ、お前はお前だろう?」
「価値観の相違ってあるじゃないですか。俺と幸也さんじゃ違い過ぎる」
「んなもん、お前、人間それぞれ価値観なんか違うに決まってるだろ!」
「奈央さんとこで、一言もなかったんですよ」
「え………?」
武人はちょっと言葉に詰まる。
「あれが、幸也さんの出した答えなんだなって」
「待て待て待て! いいか、幸也のヤツは………」
「タケさん、これから編集部でしょ? 早く行かないとおっかないライターさんに雷落とされますよ」
武人の言葉を遮るように、勝浩は言った。
「じゃ、がんばってください」
さっさとユウと大学の門を出て行く勝浩に向かって、「可愛くないぞ!」と武人が言い放つと、「俺が可愛くなかろうと誰にも迷惑かけません」と返ってくる。
全く。
武人は腕組みをしてしばらくそこに突っ立っていた。
よくない傾向だぞ、勝っちゃん。
後ろ向きに、内へ内へと感情を押し込め、ハリネズミどころかヤマアラシのようにバリヤーを張り巡らせて何も寄せつけないつもりのようだ。
そんなことを考えながら上の空で編集部に向かった武人は、打ち合わせの途中で年配のライターに話を聞いていないとどやされる。
散々な一日を過ごして家に戻ってきたところへ武人の携帯が鳴った。
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