Tea Time24

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「おう、幸也か。俺も電話しようと思ってたところだ。あ? 何だって? 猫の世話?」
 明日から出かけるから、猫の世話をしろ、説明するから今から来いと言う。
「お前、人使い荒いってか、俺はお前の子分じゃねんだぞ!」
 元来世話好きな性分の自分に呆れながら、武人は車を飛ばして幸也のマンションに向かった。
 一人暮らしをしようと思いつつ、親に出してくれという性分ではないし、自分で借りるとなると車の維持から大変なので、武人は未だに実家にいる。
 勝浩の場合、部屋の家賃は親が出してくれているようだが、バイトで自分とユウの生活費や研究会の活動費の上に、車まで自分で何とかしようと考えているらしい。
「確かに、億ション、ポンと買ってもらって悠々自適、経済観念なしの幸也とじゃ、価値観違うかもな。けど、逆に親に気つかいすぎだっつうの。勝っちゃんは」
 裕子とすっかり仲良くなっている武人は、勝浩がそれこそ無理しすぎている、もっと甘えてくれてもいいのに、と裕子から愚痴られたこともある。
 継母といっても、幼稚園の頃から裕子にピアノを習っていた勝浩は裕子によくなついていて、生まれてすぐ母親に死に別れて母親というものを知らないせいか、実の母子のように過ごしてきたという。
 ただ、幼い頃から厳しい祖父母に躾けられて、勝浩は礼儀正しい、優等生だと裕子が言っていた。
「価値観がちょっと違うくらい、何だってのよ」
 まあ、世の中のカップルが別れる原因の理由の一つがそれらしいが。
 ぶつぶつ呟いているうちに車は青山の幸也のマンションに着いた。
「どこ行くんだよ。猫の世話しろだ? んなもん、あの自動のペットフード装置があるんだし、ほっときゃいいだろ」
「トイレが汚れる」
「それも自動で、一週間は大丈夫ってやつじゃなかったのかよ?」
「俺はいやなの。第一、猫だけでおいとくって気にはなれねぇんだよ」
 トランクに衣類や本を詰め込みながら、幸也は言った。
「だから、どこ行くって?」
「ウイーンだ。お前んとこにも連絡きただろ」
「げげ、ひょっとして、じいさんのオペラにつき合うん? お前」
 武人は意外そうな顔で、幸也を見る。
 ウイーンにいる祖父から遊びに来ないかという誘いはあったことはあった。
「お前断ったんだろうが。仕方ねーから俺が行くんだよ」
「ったい、どういう風の吹き回しだ? オペラなんてたるいもん観られるかとか言ってたくせによ」
 世話をしろといわれている猫は二つ、毛の長いのと短いのがソファで団子になってまるくなっている。
「いい年だからな、オペラもちゃんと観てみるのもいいかって」
「ほお? ドンジョバンニ? モーツァルトね~、で? 明日行くって? いつまで」
 武人はテーブルの上に無造作に置いてあった飛行機のチケットを手に取る。
「一週間。ちょうど実験終わってキリがいいし」
「いいけどね。その前に、お前、勝っちゃんのこと、どうするつもりだよ」
 幸也の手が止まる。

 


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