「このやろ……」
怯えを湛えた眼差しが自分だけに注がれている。
キチクなことをしたんじゃないのかと武人に聞かれてするものかとあの時は答えたものの、今回そうは言い切れない。
それでも青臭いガキのようにメチャクチャやったわけではないが、身体をつなげたままの二度目に至ってはかなり我を忘れたような気がする。
なかなか波が引ききらずに、それでも少しはまともな思考力が戻ってくると反省しきりの幸也だが、勝浩の温もりが嬉しくて、その身体を抱いたまま離れがたい幸也は小さなキスを繰り返す。
「ダメ……です……幸也さん……」
「あ、ごめ…ん、俺、夢中でやっちまって……からだ、大丈夫か?」
「ちょっと……動けなさそうだけど……動かないと、もっと離れるのがいやになりそう」
途端、幸也は思わず吼えたくなった。
「うお………!」
訝しげに、勝浩がまだ潤んだ瞳をあげると幸也が優しく覗き込む。
「そんなこと言ってくれるとなんか、頭から食っちまいたくなる」
勝浩は幸也の腕の中で全身を熱くする。
「俺なんか、まずいですよ」
「可愛い! 勝っちゃん」
幸也はまたぎゅっと勝浩を抱きしめる。
しばらくベッドの中でぐずぐずしていた二人だが、やがて先に起き出した幸也が手馴れたようすで冷蔵庫の中にあった材料で手早く焼きそばを作ってみせた。
「おいしい……何か、意外……」
勝浩は素直に感想を口にする。
「意外はないだろ? ボストンでもちゃんと作ってたんだぜ。見直した?」
「ちょっとだけ」
はにかみがちに笑う勝浩に、「気合入ってんだぜ? 初めてのお泊りだし」と幸也。
「え、泊まるんですか? 猫ちゃん待ってますよ?」
勝浩はついまた意地の悪い言葉を口にする。
「おいおい、そりゃないよ~ 勝っちゃん~」
蜜月状態の二人のせいで少々迷惑を被っていたのは、つき合わされて遅い晩ごはんをようやくもらったユウだろう。
「そうだ、ミニ、タケに返せよな」
思い出したように、幸也が言った。
「え……だって、俺、やっと慣れてきたのに」
「そんなにミニがいいんなら、俺がプレゼントするよ」
「無駄遣いはやめてください」
「何でお前にプレゼントするのが無駄遣いなんだよ。俺は………」
ユウはまた始まったとでも思っているかもしれない。
それでも大切な勝浩が幸せそうに笑っているのは嬉しいのだろう、ユウは静かに自分のベッドで丸くなる。
平和な満月の宵であった。
――― おわり ―――
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