「過去の行状は別としても、今回、俺はお前をだまそうなんて気はこれっぽっちもない!」
「わざわざ部屋割りに小細工したくせに?」
勝浩はきっと幸也を見据えた。
「だから、それは、お前と一緒の部屋になりたかったからだって」
「へえ、それで今夜何を決めるつもりだったんです?」
冷ややかな勝浩の言葉に、幸也は一瞬たじろぐ。
「だから、だから、俺は……、お前がずっと好きだったんだよ」
そんな幸也の言葉を聞いて、勝浩はわざとらしくため息をつく。
「長谷川さん、それ、自分で言ってて、よく恥ずかしくなりませんね? 立ち聞きなんかしなけりゃ鵜呑みにしたかもしれないけど、残念でしたね」
幸也はちっと舌打ちした。
「これだよ、お前は多分、信じないと思った。だから、なかなか告ることもできなくて、俺はアメリカくんだりまで逃げたんだ」
勝浩は顔を上げて、部屋の中をうろうろと歩きながら話す幸也を見つめた。
「高三のあの時、俺は志央にはっきりフられてやっと目が覚めたって感じだった。俺自身になれたっていうか。そしたら、お前のことが気になり始めて。でもいくら俺でも、あいつがダメならやっぱりお前が好きだなんて、そんなことを言えるほど厚顔無恥じゃなくて」
それを聞いて何を言ってるんだと勝浩は鼻で笑う。
「だから、ずっと言えなくて。でも時がたてば、ひょっとしたら言える時がくるかもしれないって。とりあえず距離をおこうって、その間に、もし、お前が誰かを見つけたら、仕方ない……そう思いながら、やっぱ心配でさ。たまたま慶洋大にいたタケに、ワゴンと引き換えにお前のようすを報告しろってだな。だが、俺とあいつよく似てるし、従兄弟だって気づかれたら、お前が敬遠するんじゃないかと思ったのさ」
「なかなかつじつまの合った作り話ですね」
勝浩の一言に、幸也ははあっと息をつく。
「やっぱ信じないだろ、お前は」
「検見崎さんも、じゃあ、知ってて俺のことを報告していたと」
「言っとくが、やつにはただ、気になる後輩がいるから、お前のことを報告しろって言っただけだ。詳しい話なんか何もしてないからな。あいつは仕事にワゴンが欲しかっただけで、ウソの下手なヤツだし」
幸也は声を張り上げる。
「よく似ててもそこが違うんですね」
「言ってくれるじゃねーか。とにかく、俺はあっちにいて、お前の代わりを探したよ。だけどどいつもこいつもやっぱ、お前じゃなかった。そんな時、タケから、お前を狙ってるらしい女の子がいるって聞いて、いてもたってもいられずに、舞い戻ってきたんだよ」
煙草をくわえてはまたはずし、幸也は落ち着きなくそれを指の中でもてあそぶ。
「あの時、久しぶりに飲み会で会った時も、お前見て舞い上がりたいくらいだったけど、さり気に近づいた方がいいって思って。な、少しは信じてくれよ」
懇願するように幸也は勝浩を見た。
「ひかりさんだっているくせに」
「あいつはガキの頃からのダチで、その、俺のことよく知ってるから」
「ひかりさんもグルなんですか?」
すかさず勝浩は切り返す。
幸也は隣のベッドに座り、頭をかきむしった。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
