優しさをまともに受け取る方がバカなんだと言い聞かせながらも、ユウの後から現れた幸也の顔を見た時、ひどく嬉しいと思ってしまった自分を、勝浩は嗤った。
「勝っちゃん!」
山荘の前で待っていた検見崎は、幸也の後ろにユウを従えて戻ってきた勝浩を見ると駆け寄ってぎゅっと抱きしめた。
「心配させんなよな、命が縮んだぞ」
「すみません……」
ほっとしたようすでポンポンと背中を軽く叩いた検見崎を、ようやく離された勝浩はまじまじと見つめた。
「検見崎さん、髭が…」
「ああ、さっき剃ったの」
検見崎はお茶目な笑みを浮かべる。
「ああ、だからか。長谷川さんとよく似てる。びっくりした」
「だろう? そのことなんだが、俺たち実は従兄弟でさ。昔っから兄弟より似てるって言われてて。黙ってて悪かったよ。これには深いわけがあってだな」
「いや、もういいですよ。ほんとに心配かけてすみませんでした」
勝浩は検見崎の言葉を遮るように言って弱弱しく微笑んだ。
「風呂入ってよくあったまるんだぞ」
ユウと一緒に階段を上がっていく勝浩に、検見崎が声をかけた。
検見崎は、勝浩が二階に消えると、背後に突っ立っている幸也を振り返った。
「どしたんだ? お前。ぬーぼーとして。勝っちゃんに話したか?」
「……勝浩見つけた途端、怒鳴っちまって」
ボソッと口にする幸也は突っ立ったままだった。
「ああ? 話してないのか? まだ」
検見崎に呆れられなくても、だ。
幸也はようやくトボトボと二階へと向かう。
「俺はこれで、勝浩に嫌われたら、もう日本の地は踏まない」
はあ? と検見崎は眉をひそめた。
「何、言ってんだ、お前」
「永久にな」
そんな台詞を残して肩の落ちた幸也が階段を上がっていくのを見ながら、検見崎は呟いた。
「タラシのなれの果てが純愛、っつーのもまた、おマヌケな話だよなー。せいぜいうまくやれよ」
暖かい湯につかり、冷え切った体を温めると、勝浩はやっと人間に戻った気がしてほっと息を吐く。
「とにかくもう、面倒なことは考えないようにしよっと」
自分を励ますように呟いてみる。
もう胸が痛くなるような思いはごめんだ。
明日は合宿も終わって帰るだけだし。
長谷川さんの車にはもう乗れないから、検見崎さんの車にでも乗せてもらえばいいか。
湯船から上がると、新しいTシャツと下着に着替えてバスルームを出た勝浩は、自分用のベッドにうずくまるユウのすぐ横に長身の男が立って窓を眺めているのに気づいた。
「おやすみなさい」
さっさとベッドにもぐりこもうとした勝浩は、急に腕を引かれて振り仰いだ。
「話をしないか」
幸也は低く言った。
「俺には話なんかありません」
勝浩は幸也を睨みつけた。
くだらない言い訳も聞きたくないし、もう蒸し返したくもない話だった。
「いいから、聞けってんだよ!」
激高した幸也は乱暴に勝浩を起き上がらせた。
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