以来、『からくれないに』ロケが京都であったことから、今撮影中である映画『大いなる旅人』のロケを京都で行った時に工藤が本谷と接近しているのではなどと良太が勘ぐったりと、一時良太は暑さや忙しさとも相まって痩せたのがわかるくらい息つく暇もなかったのだ。
『からくれないに』はクランクアップしており、こちらも『田園』と前後して放映が始まる。
先日行われた『田園』の制作発表の際、本谷も顔を見せていたが、良太は裏方に徹していたし、本谷はすぐに次の仕事先にマネージャーに連れていかれたので言葉をかわすこともなかった。
最近はCMの仕事で忙しいらしいと聞いていた。
明日、工藤が制作発表に顔を出すかどうかはわからない。
本谷が頑張っていることはいいのだが、人を想う気持ちがそう簡単になくなるものでもないはずだ。
本谷が案外素直で真面目な性格だからこそ、良太にも身につまされるものがある。
ただし、相手が工藤でなければどんなにありがたいかとは思うのだが。
「良太、百面相」
ボソリと口にしたのは檜山だ。
「は?」
「良太ってホント顔に出てるよな、今何考えてるか」
檜山に笑われて、「ええ、そんなわかりやすい? 俺」と良太は情けない顔で呟いた。
「可愛いからいんじゃない?」
檜山の言葉に志村も吹き出した。
「だからからかうの、やめて……」
和やかな雰囲気の中、監督が撮影開始を告げた。
翌日、MBCのドラマ『からくれないに』の制作発表が都内老舗ホテルで行われた。
ミステリー作家小林千雪原作の老弁護士と事務所の若手弁護士が活躍する人気シリーズで、既に何作かが映画やドラマ化されている。
実は別のドラマが決まりかけていたところで、諸事情によりそのドラマがとん挫し、局側では急遽、開いた穴を塞ぐのに必死だった。
そこで白羽の矢が立ったのが、少し先に予定されていた『からくれないに』で、五回ほどの連ドラに仕立ててしまった、というわけだ。
何分、各局が力を入れるという秋ドラマで、局にとっては下手な作品は持ってこられない上、そこそこ視聴率が取れて尚且つ失敗はないだろうというシロモノが必要だったのだ。
制作発表には、主演である老弁護士御園生役の端田武、事務所の若手弁護士海棠役、大澤流、ゲストにはベテラン俳優の山内ひとみ、前回青森県警のキャリア鮎川役で登場し、今回は異動で神奈川県警へやってきたという設定で、青山プロダクション所属俳優の中川アスカ、さらに犯人に殴られて被疑者にされるリーマンという、ドラマのキーマンとして出演している本谷和正が登場した。
連ドラでもあり、仕上がりも上々と聞いた局のプロデューサーは機嫌がよく、珍しく顔を見せた工藤にニコニコと頭を下げている。
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