空は遠く167

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「そのことか。別に気にしてないし。山本は俺のこと嫌ってるから、自分の名前も名乗りたくなかったんだろ。柳沢さんが家庭教師やってるのはちゃんと坂本なんだし」
「ああ、うん、とにかく、悪かったよ」
「で、二つ目は?」
 催促されて坂本は少し逡巡しながら言った。
「いや、俺には成瀬の交友関係にとやかくいう権利はないだろうが、一応、言っときたい。上谷のことだが、あいつには気をつけた方がいい」
「え?」
 上目づかいにほんの少し頼りなげな眼差しを向けられて、坂本は一瞬ドキリとした。
「まあ、俺が言うのもなんだけど、あいつ結構遊んでるみたいで、六本木あたりのクラブとかでモデルの女とかさ。知り合いから聞いた話なんだが、あいつかなり外道なことも平気でやるやつらしいって」
 佑人にも坂本が真剣なのは伝わった。
「らしいって、坂本が実際見たわけじゃないだろ?」
 だがそれをそのまま受け取っていいかどうかは別の話だ。
「そりゃ、そうだが……」
 佑人の切り返しはもっともである。
「事実じゃないという保証もないぜ?」
「それだけなら、もう帰るよ」
「待てよ! お前、バ………」
 坂本は背を向ける佑人をもどかしげに呼び止めた。
 佑人は坂本を振り返る。
 バレンタインパーティに行くつもりかと聞きそうになって、坂本は危うくとどめた。盗み聞きしていたことをうっかりバラすところだった。
「いや、マジ忠告しとく。あいつ、男も食うってよ」

 


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