空は遠く170

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 練が強面を崩してたわごとを口にしている間に、検索していた渡辺美月の画像がいくつか表示され、坂本はクリックして拡大した。
「フーン……あっ!」
 思わず叫んでしまったのは、明らかに美月には佑人の面影があったからだ。
「やっぱ、そっか」
 ああこの女優か。
 渡辺美月の名前を聞いたのは今日の帰りがけのことだ。
 たまたま校門を出たところで啓太や東山と顔を合わせ、一緒に歩くうち、啓太が三者面談の話を始めて、「そういえばさ、成瀬のお母さんってさ」と言い出した。
「前に、成瀬んちに行った時もすんげ、美人だと思ったけどさ、面談のあとうちの母ちゃんが、あれは絶対渡辺美月だって」
「渡辺美月、ってあの大女優の? って、お前の母ちゃん会ったのかよ?」
 東山が怪訝そうな顔をした。
「成瀬の次が俺で、呼びに来てくれたんだよ、成瀬のお母さんが」
「バッカ言え、そんな大女優とかの子供がうちみたいな三流の公立なんかにいるはずねぇだろ」
「ぜって、そうだって、昨日、テレビ観てたら、ほんっとに成瀬のお母さん、出てたもん」
「他人のそら似だって」
 二人のやり取りに坂本は口を挟まなかったが、渡辺というキーワードが引っかかったからだ。
 で、検索してみたところ、ビンゴだった。
 さらに美月についての記事を探っていくと、彼女の息子が暴力沙汰を起こしただの、母親失格だの、美月に対するバッシング記事が出てきた。
「なるほどね………」

 


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