たまに販売会社の人間が彼らのライブに現れ、絶賛するものもいれば酷評するものもいた。
『時代遅れもいいとこ、時流から完璧はずれてる。せっかく技術があるんだからもっと別の方向から攻めた方がいいんじゃない?』
誰に何を言われてもへとも思わず、やりたいことだけやっていた。
自分たちの好きな音に対する追求、それだけはメンバー全員一致していたからだ。
やがてマイナーレーベルと契約にこぎつけたが、ライブではたくさんのファンがついているとはいっても、CDも簡単に売れなくなってきた昨今、ちょっとしたネット配信くらいでは活動費用がまかなえるものではない。
当然、学業よりバイトということになるのだが、実際彼らにとってはバイトの一つや二つ増えたところで、何の苦にもならなかった。
大阪で二晩続きのライブがあり、その最初の夜のことだった。
「元気ー、前座の『ガチンコ』って、聴くに耐えないぜー、もっと他になかった……」
安宿に雑魚寝状態で泊っていたから、マサがドアを開けて入ってきたからといって、悪かろうはずはなかったのだが。
「……何…やってんの?」
ぼーっと立ち尽くすマサの目は、布団の中で一緒に寝ている一平と元気に釘づけになる。
「…るせーな! 邪魔すんじゃねー」
超不機嫌そうな一平の怒声に、マサは慌てて部屋を飛び出した。
「どうした? あわくって。お化けでも出たか?」
煙草をくわえながら廊下を歩いてきたみっちゃんが声をかけた。
「……い…一平と元気が……!」
部屋を指差しながら、目を白黒させているマサに、ああ、とみっちゃんが頷いた。
「今夜の客が気に入らなかったんだろう。途中からかなり荒れてたからな、一平のやつ」
苦笑を漏らしながら、「ありゃ、一平のビョーキ」、とみっちゃんはボソリと言う。
「しゃーねー、カラオケでも行くか」
みっちゃんは悪い夢でもみたかのように放心状態のマサの肩に腕を回した。
寄ってくる女は食い放題のくせに、以前、酔っておふざけでベッドで絡み合ってからエスカレートし、ライブで地方回りに出て女がいない時など、一平は元気をベッドに引っ張り込むようになった。
元気にとっても、楽しければいい、初めはその程度の行為だった。
