拠点としていたS温泉の宿で山本や彼のスタッフと別れ、再び、スキー場に向かう。
S高原スキー場に着き、さあ滑ろうと豪がロッヂに入ったところで、クリスマスのイルミネーションに彩られた華やかさとは裏腹に、何やら緊張した面持ちで慌しく人が行き来しているのに気づいた。
「何かあったんですか?」
しきりと携帯をかけては切りしている若いスノーボーダーらしい男に、声をかけた。
「え、ああ、仲間がさっきの雪崩に巻き込まれたかもしれなくて」
おろおろと、金髪にカラフルなジャケットの男が答える。
「雪崩?!」
肌はかなりよく焼けている。
「ほんの一瞬だったんだけど、あのコースの向こうで、ザザーーって」
「俺、リフトからちらっと見たんだよ。あいつら、ネット潜り抜けて、整備してない急斜面に入ったんだ。ったく、バカなことやるからだ」
隣で憤るのは大学生くらいだろう、茶色の髪が帽子から見えていた。
「携帯は持ってないのか?」
つい突っ込んで、豪は訊いた。
「ダメ。つながんねーし。今救助隊とかもこっちに向かってるっていうんだけど」
「どの辺りだ?」
豪はスキー場のパンフレットを広げてコースを確認する。
「このコースに行く時だ、やつら見かけたの」
「もいちど、行ってみるわ、俺。けど、わっかんねーんだよな、この辺の地理って」
帽子の男がそういって歩き始めた。
「俺も一緒に行こう。この辺り、ちょっと詳しいし」
聞いた以上、放ってもおけず、豪は一緒に歩きだす。
「俺も行く」
おろおろしていた金髪の方も、二人の後を追ってきた。
最近の気象予報はかなり密な情報を得ることができるようになったとはいえ、山の天気は変わりやすい。
わかってはいるものの、その変わり身の早さは人間ごときには到底追いつかない。
一度でも山に入った者なら、計り知れない自然の脅威を肌で感じた経験もあるだろう。
だが、何につけても甘いくせに、無謀な若者はどこにでもいる。
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