夏を抱きしめて26

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「そいつ、元気が俺らの元メンバーってこともつきとめてさ、自分とこで売り出そうって魂胆なんだ。確かに今元気はフリーなんだが、そんな業界ヤロウに元気を持ってかれるくらいなら、うちに連れ戻すって、浅野がさ。もとはといえば、お前の写真展、あれが原因だな」
「俺の…写真?」
 豪は息をのむ。
「お前、元気の昔の写真でかでかと、ありゃ確かに何者だ、こいつはって思うわな。あれが元気だってこた、その辺のロック少年に聞けばすぐわかるしなあ。お前、今は売れっ子カメラマンなんだって自覚なくね?」
 うっと、豪は言葉に詰まる。
 あの作品は豪には大切なもので、仕事場になっている東京のマンションにあるが、元気に見てもらいたいために展示しただけなのに、まさかそんなことになろうとは。
「一平、その噂のことでも激オコだから、お前、気をつけろよ」
 最後にまた脅されて、豪はまたしても深く沈没した。
「あ、そういや、一人、いたな。元気が頼るとしたらあの人かも」
 みっちゃんは何かを思い出したらしく、独り言のように言った。
「誰だよ? そいつ!」
 勢い込んで豪は聞き返す。
「いや、かも、って話。ま、そっちもちょっとあたってみるわ。俺も元気と話あるし」
 みっちゃんが電話を切ると、はああああと豪は長い溜息をついた。
「だいたい、元気のやつ、かけてほしい時にかけてこねーで、なんて…」
 なんてバッドタイミング。
 豪にとってか元気にとってか、わからないが、事は悪い方へ悪い方へと転がっていく。
 豪はやっと我に返ったように、肩にかけている器材を使い古しのチェロキーの後部座席に放り込み、運転席に乗り込んだ。
 どれだけかけても元気の携帯は応えてくれない。
 希望は消えた。
 結局、悶々と夜を明かした豪のもとには誰からも連絡はなく、朝を迎えてしまった。

 


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