夏を抱きしめて33

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    ACT 5

 すっかり夜のとばりがおりた湾岸線を一台の古いチェロキーが猛スピードで飛ばしていた。
 今夜も関東地方は熱帯夜の連続記録を更新したらしい。
 夜空は晴れ渡り、月はまだ熱の覚めやらぬ街を煌々と照らし出している。
 雑誌に月イチで持っているページの撮影で、豪は四時頃から横浜を散策していた。
 夜景というテーマで毎月いくつかのスポットを決めて撮られたショットは読者にも評判がよく、いずれまとめてムック本として発表される予定になっている。
 編集部の担当者やライターと現地で合流し、夜になるのを待って横須賀、本牧、ベイブリッジと撮り続けた。
 終わったのは十時をまわった頃で、見計らったかのように豪の携帯が鳴った。
 残念ながら元気ではなかったが、みっちゃんからで、仕事が終わったのならすぐに来い、という。用件はそれだけだったが、何となく胸騒ぎがして、豪は挨拶もそこそこに指定された場所へと急いでいた。
「今日、結婚式だったら、携帯なんか切ってるよな」
 一人ハンドルを切りながら慰めてみる。
 時折、早いとこ誤解を解きたいとはかない期待をもって元気の携帯を呼び出してみるのだが、案の定、何十回と聞いた空しい返答が返ってくるばかりだった。
 朝を待って、関係者をあたりやっとADの葉子にコンタクトを取ったものの、想ったとおり、説明する前に切られちゃったし、だ。
「何で、肝心な時に出ねーんだよ、俺は!」
 自分を罵ったところで後の祭りだ。

 


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