夏を抱きしめて34

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 出かける前一、二時間ほど途切れがちな仮眠をとったものの、一晩、みっちゃんからの連絡を待ってほとんど寝ていない。
 自嘲的に今までの時間を思い返す。
 俺、どれだけ元気のこと見てたんだろ。
 元気が頼る人っていったい誰だよ?
 だって、何にも恐いものなんか、ないって感じだったし。
 唯一、って……まさか一平? あの人、頼れるって感じじゃないだろう。
 とはいえ、行ける時はたまにGENKIのライブに行っているが一平の圧倒的な存在感には気圧される。
 幻のギタリスト、なんて胡散臭い噂には半信半疑だったが、朝から情報を手繰って、どうにか入手した海賊版ライブCDで元気のギターを聴いた時、豪はぞっとした。
 音はすたれているどころか、前にも増して研ぎ澄まされている。
 GENKIは元気を連れ戻したがっている。得体の知れないプロダクションに渡すくらいなら、GENKIに戻った方がいいに決まっている。
 元気は否定するけど、元気がバンド抜けたのは俺のせいだ。
 オヤジさんが亡くなったのをきっかけにしただけだろう。
 きっと、きっと元気は元のさやに戻り、俺から去るに違いない。
「いやだからな! 俺はそんなの!」
 はあ……、やっぱ、一平んとこにいる可能性は大だよな。
 みっちゃんは知らなくても。
 ちぇ、クソクラエだ!
 やけくそ気味に、豪はアクセルを踏んだ。

 


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