西高東低7

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 東山の横に佑人の顔を見つけて、力は誰にもわからないほどに息を吐いた。
「力! 受かった! 俺、奇跡だと思わね?!」
 力に気づくと東山は数人の女子にクスクス笑われながら躍り上がらんばかりに力に駆け寄った。
「そら、よかったな」
 力は自分の机に鞄を置き、コートを脱ぐ。
「もうあれもこれも何もかも成瀬のお蔭! 佑人サマサマ!」
 ははあ、と両手を合わせて拝む東山に、「俺じゃなくて東が頑張ったんだろ」と言いつつ、佑人は力を見つめた。
 気になっているのは力の合否だ。
 たまにメールをやり取りするくらいで顔を合わせるのも二月の始めに補講から帰る時に別れて以来だった。
「受かるまで会わない。受かったら知らせる」
 そう断言する力にはもう何を言っても無駄だと佑人もわかったし、無論邪魔をしたくなかった佑人は頷く以外になかった。
 力は少なくとも二校は受けて、そのうちの一つY大は既に合否がわかっていたはずで、連絡がないのはダメだったのか、と佑人は自分のことよりもヤキモキしていたのだ。
 受かったらって、もし万が一受からなかったらどうすんだよ!
 ずっともう会わないつもりかよ!
 佑人にとってみれば、力が合格すれば嬉しいけれど、もし受からなくて浪人することになっても、また頑張ればいいのだし応援したいと思う。
 自分だって受かるか受からないかまだわからないわけで、佑人は仮に受からなくてもそれなりにやっていけばいいというスタンスだ。
 だが力は何やら意地になっている。
 しかも佑人と担任の加藤以外には志望校すら話していないし。
 受からなかったから受かるまで会わないとか力が言い出したらどうしようと、佑人は気が気ではなかった。
 今日、十四日はS大獣医学部の合否がわかることになっていた。
 九時頃、力から後で教室に行く、というメールを受け取った佑人は、居ても立っても居られずドキドキしながら八時半頃にはもう学校に着いていた。
「あ、力………」
「おう、力、やっぱ来ると思った、チョコどんだけもらったよ?」
 立ち上がった佑人が声をかけるより先に、坂本がズカズカ教室に入ってきた。
「てめぇはほんといつでも能天気でありがてぇヤツだよ」
 力がつい佑人の視線を避けてしまったのは、少し後ろめたいところがあったからだった。
 受かったら知らせる、確かに佑人にそうは言ったのだが。
 何やら逡巡している力の肩越しにひょいと佑人を見た坂本と佑人の目が合った。
「佑人ちゃぁん、随分久しぶりじゃない? 会いたかったぁ」
 途端に坂本は佑人に駆け寄って抱きしめる。
「え、あ、うん……」
 何と言っていいかわからない佑人をぎゅっと抱きしめてから、「そっか何気に佑人もチョコ貰いたかったわけやね?」と坂本は佑人の目を覗き込む。
「いや……」
 今日がバレンタインだとはわかっていたし、確かに靴箱にはいくつかのラッピングが入っていたが、はっきり言って今の佑人にはどうでもいいことだった。
 さらに坂本がお茶目なのは今に始まったことではないが、力のことが気になる今の佑人にしてみれば非常にウザったいことこの上ない。
 しかも当の力はコートを椅子にかけると、また教室を出て行こうとしている。
「え、力……」
 佑人が声をかけようとした、その時またドアが開いた。


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