ACT 4
良太はむっつり黙りこくったまま、みんなの後ろからゲレンデに出た。
小笠原は、どうしたんだ、と良太を心配して声をかけたが、アスカや秋山はあえて何も聞いてこない。
しかもまたしても招かれざる客がそこに登場したのだ。
少なくとも良太にとっては。
出掛けに、小笠原の携帯が鳴った。
ホテルのロビーで、小笠原はしばらく携帯で何やら話し込んでいたが、やがて、彼は一人の派手な美女を連れて現れた。
「北海道にロケにきたんだけど、なんか、こっちに裕二がいると思って電話したのよ」
くせのある美人女優、黒川真保。
裕二とはドラマで共演して以来、二人の噂もたったことがあった。
豊満な身体と魅惑的な目、色っぽさは天下一品。
だが真保は、裕二とはまったく友人関係、と豪語している。
ただし良太は酔った弾みで小笠原が口走ったのを覚えていた。
一度は寝たのだと。
このやろう、思うものの、それも男と女の事情だから仕方あるまい。
ところが、昼を食べて、またゲレンデに繰り出した頃。
真保が小笠原ではなく、工藤にぴったり張り付いているのだ。
黒とダークグレーのウエアをゆったり着こなした工藤は、常にも増して大きく見える。
スキーを自由自在に操って滑る工藤を見てからというもの、俄然、真保が工藤に懐き始めたのだ。
女を武器に、工藤の腕にしなだれかかり、ゲレンデでしっかりモーションをかける。
そんな二人がリフトに乗り込むのを、良太はムッとした顔で見送った。
ったく、何でこう、タイミングよくか、悪くか知らないが、変なやつが現れるんだよ!
良太はカッカきて、一人、がむしゃらに滑りまくる。
第一、工藤自身がそれを喜んでいるんじゃないのか。
小笠原は二人を見てにやにや笑っているだけで、どうやら彼女に対して別に何の思い入れもないらしい。
クッソー!!
何だか知らないが、何でこうなるんだよ!
今頃工藤と一緒に滑ってるのは俺のはずだったのに!
あのヤクザのご一行といい、このイロケ過多女といい、良太にとっては、目障りこのうえない。
それでも、夢中で滑っている時はまだよかったのだ。
上の方から吹雪になりはじめていた。
良太は、自分の腕にそう自信があるわけでもないから、スキーも難なくこなしていた小笠原のあとについて降りかけた。
アスカと秋山は小一時間ほど前に、お茶するからと二人で早々と麓に降りていた。
そこへ、上から颯爽とやってきて、二人の横を滑り降りていったのは、工藤と真保だ。
しゃくに障るのは、真保も工藤にしっかりついていくくらいの腕だということだ。
良太と小笠原もそれに続くように、割りと急な勾配へとスキーを滑らせる。
下の方で工藤がスキーを止めた。
どうやら後ろをついてきていた真保が転んだようだ。
工藤は、真保がひっくり返っているところまで斜面を上がると、手を差し出して起こそうとした。
「あ!」
小笠原が小さく叫ぶ。
はたと良太がその方向へ目をやると、真保が工藤の首に腕をかけて、キスしている。
少なくともそれ以外には見えなかった。
既に良太と小笠原も二人の近くまで滑り降りていた。
「見せつけてくれるねー!」
小笠原がひゅっと口笛を吹く。
「やあね、裕二ったら」
そんな真保の科白を聞いた途端、かーっとなった良太は、無我夢中で下まで滑り降り、とっととホテルまで帰ってしまった。
そういうことかよ!
わかったよ。
勝手にやれよ!
俺は帰る。
良太はシャワーも早々に、帰る準備を始めた。
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