「そういえば真中は?」
思い出したようにマネージャーの所在を良太は尋ねた。
「何か、テレビ局に届いた俺宛のチョコ取りに来いって言われて」
「上のリラクゼーションルームにもたくさん届いてるぜ」
「うう、どうしろってんだ? チョコとか業者に分けても、去年みたいなことあるからな」
「ああ……」
もらったチョコを業者に分けたのだが、真中がついうっかりチョコをくれた本人にそのチョコを渡してしまったのだ。
そりゃ相手は怒るに決まっている。
「仕分けはきっちりやれよ。メッセージカードとか、ちゃんと見ないと」
「まあなぁ」
コートを着た鈴木さんが、「じゃ、お先に失礼します」と良太と小笠原に声をかけた。
「お疲れ様です、すみません、また遅くなってしまって」
壁の時計が既に七時近くになっていることに気づいてすまなさそうな良太に、「いいのよ、良太ちゃんもあんまり無理しないでね」と言い置いて鈴木さんは帰っていった。
しばらくキーボードを叩いていると、デスクに温かいコーヒーが置かれた。
「ほいよ」
顔を上げると小笠原がコーヒーを飲みながら、またソファに腰を降ろす。
「どうも……って、今夜、確かスタジオあっただろ? こんなとこでグータラしてていいのか?」
「ああ、八時から? 真中来ねぇし、まだ」
小笠原はコーヒーを飲み終えた紙コップをくしゃりと潰してゴミ箱に投げる。
「お! ストラーイク!」
小笠原が一人遊びをしているうちに良太はファイルをプリントアウトすると、それを揃えてクリップで留める。
「あんな女ども、言ってやればいいじゃん。工藤には決まった相手がいるってよ。ほんと、うっぜえ」
「何でそんなこと……工藤のことなんか、俺が言うべきことじゃないし」
「何、言ってんだよ! お前、それでいいのかよ?!」
良太の言葉に急に語気を荒くして、小笠原は立ち上がった。
ひょっとして、小笠原は自分と工藤の関係をもう知っているのかもしれない。
まあ、下柳や会社のみんなも何となく知っているだろうことだ、小笠原もこのオフィスに来て時間も経ったわけだから、知っていてもおかしくはない。
「俺が、いいとか、そんな問題じゃないし」
ちょうどそこへ真中が飛び込んできた。
「すみません、遅くなりました!」
「おう。じゃな、明日また連絡するわ」
小笠原はそう言うと、真中を従えて出て行った。
良太はしばしぼんやり、突っ立っていた。
「そんな簡単にいけば、俺もそんなグルグルしないって…」
夜になると一層冷え込んできた。
ネットの天気予報を見ると、北海道は吹雪くという予報である。
「工藤、明日帰れるのかな……」
未明から関東地方の平野部でも雪が降るという。
「ナータンたちも寒いかも。そうだ、早速、もらったベッド使わせよっと」
仕事に区切りをつけると、良太は小夜子からもらったペット用ベッドの入った紙袋を抱え、灯りやエアコンを消してオフィスを出た。
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