桜の頃 5

Home ◆ 京助x千雪Top ◆ back ◆ next


「俺の力やとスレスレのラインやったし。そんなん、お前に言うの恥ずかしいやろ」
「お前が恥ずかしいなんて考えると思うか?」
 千雪が断言すると研二は笑う。
「とにかくや、ほんまに心配なんや、いろいろ。それにお前、一人にしとくと突っ走るやっちゃしな」
 研二は心配だった。
 この際立つ美貌の幼馴染のことを。
 在学中、いやという程女の子には追いかけられた、だけではないからだ。
 それを考えると心が揺らぎそうになる。
「余計な心配、せんかてええ! 俺も考えて、秘策があんねん」
「秘策?」
「まあ見ててみ」
 いたずらっぽく笑う千雪を研二は優しい目で見つめる。
「そや、お前、答辞、読むんやなかったか? 原稿は?」
「答辞は読むけど、原稿なんかないし」
「原稿がない?! どないするんや」
「せやから、原稿は書かんでも、頭の中にちゃんと書いたるよって」
「ほんま、大丈夫なんか?」
 まだ心配そうな顔をする研二に、千雪は言った。
「そうや、お前、第二ボタン、気ぃつけとかんと、あっという間に取られるで」
「第二ボタン?」
 ぴんとこないようすの研二に、千雪は「せやから、記念に第二ボタンください、いう、あれや」と説明する。
「ああ、俺にはそんな心配いらん」
「あほやな、お前に憧れとおる女子結構おるねんで? お前が睨むからよう近づかんだけで」
「ほな、よう近づかんやろ」
「甘いわ。今日が最後やし、そういう時の女の子を甘くみたらあかん」
「身をもって体験しとるしな、お前。お前のおっかけ、すごかったもんな~、特に女学院の」
「今日でそんな心配もしまいや」
「そやな」
 歩きながら、二人はふとどちらも黙り込む。
 と、いきなり、研二が学生服からボタンを引きちぎった。


Home ◆ 京助x千雪Top ◆ back ◆ next

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村