花のふる日は 102

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「あれやろ? たまに学校の生徒脅して金巻き上げたりしてた」
「こいつ、千雪、現場に居合わせていきなり、やめろて、身の程知らずにそのワルに突っかかっていきよって」
 周りもあったあった、と頷く。
「あたりまえやろ? あの三年、ヘラヘラしよって!」
 千雪もその時のことを思い出してまた眉をひそめる。
「喧嘩になりそうになったところへ、研二が現れて、そのワル、研二に挑もうとしたけど、結局諦めたいう」
「こいつとやりおうて、勝算なんかあるわけないのにな」
 みんながゲラゲラと笑う。
「何や、俺だけやと、まるで弱いみたいやんか」
 ムッとした顔で千雪は抗議する。
「まあまあ、千雪の行くとこ、大抵研二がひっついてたよってな、義経弁慶て、桜陽女学院のあたりでも結構有名やったみたいやで」
「おじょーさまに千雪が追っかけられてもな、そこへこいつが怖い顔して現れてみ、近寄られへん」
 また、場がわっと沸いた。
「なるほど、研二くん、そんなに強いんだ?」
 京助が言葉を挟むと、そうそう、とみんなが一様に頷く。
「インターハイでもかなりええとこ、いったよな?」
「警察からもスカウトきてたやん」
 研二は言われるまま、苦笑を浮かべているだけだ。
「警察には行かなかったわけか?」
「こいつのうち、こいつで三代目の和菓子屋なんです。俺はうちを継ぐから、いうて」
 京助の問いに答えたのは島田だ。
「まあ、今は、美人の奥さん専属の弁慶やけどな。子供、予定日いつやった?」
 安川の何気ない言葉に、千雪は表情を硬くする。
 コンビニでの二人のシーンが頭に蘇り、一気に現実を突きつけられた。
 それが普通やん。何を動揺してんのや、俺は。
「ほんま? 研二もついにオヤジになるんか。何や、年くうわけやな」
 つとめてさり気なく口にしたつもりだった。
 だが、グラスを持つ手が震えているのに気づき、千雪はそれを隠そうとグラスを空ける。


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