花のふる日は 104

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 にっこり笑った京助だが、研二に返す眼差しは明らかに挑戦的になる。
 今さら千雪に弁慶は必要ないんだよ。お前さんは身重の奥さんの心配だけしていろよ。
 口にはしないが、心の中でも言葉で牽制する。
「京助さん、パイ、焼けました」
 シンクの奥で黙々と酢の物や豆腐で酒のつまみを用意していた井原が呼んだ。
「おう、サンキュ」
 オーブンから取り出したパイを切り分け、京助が小皿に盛りつけると、井原はつまみと一緒に酔っ払いがたむろすテーブルへと運ぶ。
「京助さんのパイでっせ。パンプキンパイ」
 きゃあと喜んだのは江美子と桐島だ。
「ローストビーフもチキンパイもサラダも、京助さんのお手製。プロ並みやで」
 井原の説明に女子二人はまた歓声を上げる。
「ほんまに? こんな芸当もやらはるんですか?」
「も……というと、他に何か?」
 京助は桐島の発言につい反応する。
「またまた、京助さん、テレビや週刊誌ではおなじみさんやないですか。まあ、アタマといい、家柄といい、それ以上に直にそのイケメンぶり見せつけられたら、俺らには太刀打ちでけまへんけど」
 フフフと笑う桐島の代わりに、ひょうきん者の島田がブツクサ僻みを口にする。
「でけるか、アホ」
 隣から頭をはたかれて、島田は撃沈した。
「お待たせしました~、もう、みんなすっかり出来上がってるんちゃう?」
 先だっての事件の話で、千雪が質問攻めにあっているところへ、今度はすっかりフェミニンなワンピースで変身した菊子が現れた。
「あ、菊ちゃん、こっちこっち」
 江美子が呼んだ。
「もう十一時やし、うち、帰るわ」
「まだ十一時やないの、あんたのバカ旦さん、まだこれから場所変えて遊びいかはる時間やわ」
「おかあちゃんが気にするしな」
 菊子は溜息をついた。


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