花のふる日は 32

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 京助はおせっかいなのだ。
 困っていれば手を貸さずにはいられない、それはよくわかっている。
 自分もそのお陰で東京で生きてこられたようなものだと。
 でも、あのモデルとのことはおせっかいを超えている。
 状況を聞けば気の毒な人だ。
 だがその人の思いを受けとめたのなら、京助は彼女の傍にいるべきだ。
 むしろその方が、男と公衆の面前で修羅場ってたなんてスクープされるよりマシだろう。
「あとで、おにぎりの作り方教えてくれへん? 俺もええ加減、自分でメシくらい作れるようにならんと」
 キッチンは広く、大きな作りになっている窓からはさっきまで薪割りをしていた裏庭がゆったり眺められる。
「あれ、右側の大きな木、桜ですか?」
 雪を被った庭の中に一際大きな木が屋敷を見下ろしている。
 蕾もまだ眠りから覚めていないようすで、東京辺りと比べれば開花は随分あとになるのだろう。
「ああ、前のご当主が大事にしておられたということで、社長も子供の頃は毎年ゴールデンウイークには必ずこっちにこられて咲くのを楽しみにしとられたんじゃが、今は愛でるのもこのじじい一人で、桜も寂しがってることじゃろ」
 極道のイロボケヤロウ、おまけに薄情なヤツなんや。
 心の中で千雪は毒づく。
 昼近くになると日差しが出てきたので、根雪がなくなるまでにはまだ時間がかかりそうだが、朝方降った雪は消えたようだ。
 せっかくの軽井沢だし、エッセイのネタを仕入れられるかもしれないと、散歩をしてくると老人に告げて、千雪は屋敷を出た。
 門まで歩いて数分、白樺林が続く細い道をしばらく行くと割と広い通りに出る。
「芭蕉の碑とかあるみたいやし。……うーん、けど、女性誌のエッセイに芭蕉なんて、渋過ぎるかなぁ」
 独り言を呟きながら、千雪は思いがけない早春の軽井沢をしばし楽しむことにした。
 


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