「あと、今後一切表舞台になんか出てこられなくしてやる、とか、それ脅迫罪に当たるで? 第222条 第1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する、て、君、刑務所の生活、耐えられる?」
さらに日向野を青ざめさせたところで、パチパチと手を叩く音が重なった。
「ブラボー、お嬢ちゃん、この千雪に勝とうやなんて、千年早いわ。やっぱ千雪、いずれお前検事補やな。その毒舌口調で、犯罪者をどんどん刑務所に送ったれや」
三田村が笑いながらやってきた。
それを聞いた日向野は唇をわなわなと震わせている。
「ほんと、弁舌きつ過ぎるわ、千雪ちゃん。裁判の予行演習?」
理香も三田村の後ろから現れた。
途端、日向野は身を翻して屋内へ駆け込んだ。
「あ、待ちや、まだ、言うてないことが………」
「こらこら、もうそのへんにしたったれや。相手は検事補なんて日本にないことさえ知らへんお嬢ちゃんやで?」
「あら、そうなの?」
理香がまともに聞いた。
「アメリカのドラマ見てればわかりますよ。それにしても、何であのお嬢ちゃん連れて来はったんです? どっか他のメンツとずれまくってますよね?」
三田村が理香に聞き返した。
「知らないわよ。克也が、京助が温泉行くらしいから俺らもいこうぜとかって、何かのパーティで話しかけてきたら、それを聞いてたらしくて、勝手について来ちゃったのよ」
「なる。いや、家柄がどうの血筋がどうの、石器時代の話題を持ち出すやなんて、思わずお嬢ちゃんやのうてババアかとか言いそうになりましたわ」
理香が高らかに笑った。
「あら、あたしだって、由緒正しい血筋なのよ?」
「家元制度とアートは別もんですやろ」
千雪が割り込んだ。
「言ってくれるじゃない?」
「理香さんはアーティストや言うてるんですよ。でも血筋や努力だけではアートは生れへん」
「それはもしやお褒めの言葉かしら?」
「当たり前ですやろ。血筋でアートがでけるんやったら、俺なんかとっくに有名画家になってますやん」
「それもそうね」
玄関ホールを通り過ぎる時、大きな壺に生けられた花や枝は雄々しく瑞々しく見る者に語り掛けてくるようだ。
「刹那の芸術やな、生け花て」
千雪がボソリと言った。
「それがいいんじゃない」
「深いわ。パフォーマンスでもありますよね。ピアニストはピアノを弾く、華道家は花を生ける」
三田村が一人悦に入っている。
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