「何かてったおか?」
部屋に戻ってから、キッチンに行って忙しくしている研二に、ソファでだらだらしていた千雪が聞いた。
「うーん、ほな、そこの棚から食器出してくれ」
「よっしゃ」
張り切って棚の前に立ったものの、どれを使えばいいかわからず、イチイチ研二に、これでええ? と聞く千雪に、研二は苦笑した。
食材を切って大皿に乗せると、研二はカセットコンロを上の棚から取り出してリビングのテーブルにセットした。
「ほら、肉ばっか食うてないで野菜も食え!」
研二が用意したすき焼き鍋は美味くて、千雪は遠慮なくぱくついた。
「どんだけ腹減ってんね」
「美味いから食うてんやろ」
研二は笑い、純米酒の熱燗を千雪と自分の器に注ぐ。
店のオープニングパーティのようすが全国ネットで放映され、ネットでも拡散されたため、京都の親戚知人近所の連中同級生らが大騒ぎで大変だったことや、さらにあちこちから取材のオファーがあったために、芝が対応に追われて大変だったらしいとやら、研二にしては珍しく饒舌に話す。
千雪はそんな研二の話に声を上げて笑った。
研二は千雪のようすが心配していたほどのことのかも知れないと思いつつ、千雪が無暗に笑っている気がした。
「一年の合宿は、山下先輩のシゴキで楽しむ余裕なんかあれへんかったけど、二年の時は皆で鍋つついたりして、おもろかったなあ」
千雪は高校時代の剣道部のことを色々と語った。
研二も柔道部の合宿のことや、インターハイのことを思い出しながら語る。
それから幼い頃の話になった。
江美子と研二と千雪と、とにかくよく一緒にいた。
三人の幼子が遊んでいるようすを描いていた千雪の母夏緒のことも話に上った。
「おばちゃんがピアノ弾きながらみんなで歌歌うたり、おこたでミカン食べたり、今でも昨日みたいに覚えとる」
小学校に上がった時、それぞれの親たちが三人揃って写真を撮ったこと。
幼い頃から千雪の美貌は評判で、悪ガキたちのからかいがたまに度を超えることがあって、そういう時、研二が千雪の前に仁王立ちになる。
だが、千雪も口では負けておらず、その毒舌に言い返すこともできずに悪ガキは逃げ出した。
研二が千雪を護ることに徹し始めたのはその頃からだったろうか。
中学でも、そして高校に進学しても研二にとっては千雪は護るべき存在だった。
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