メリーゴーランド266

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 ただ、年を経るに従って研二は千雪に対する感情が恋慕に変わったのを認めざるを得なくなった。
「何や、この頃、よう思うんや。あの頃に戻りたいなあ……て」
 千雪がボソリと言った。
 千雪のその言葉は研二の胸を突いた。
「俺も、そんなことよう思う。現実逃避やな」
「思うてもしょうもないもんな」
 自嘲する千雪に、研二は何も言えなくなる。
「研二はこっち来て、ようやっとるやん」
「いや………一人でこっち来て、店も持つことになって、責任も重大やしほんまになんもかんもやらなあかんくて、目えがまわるてこういうことやなて」
 ハハ、と研二は笑う。
「地元におったら、俺はあくまでもオヤジの店の従業員で、面倒なことはみんなオヤジとオフクロがやってくれよったんやなて、改めて思うわ。年明けの確定申告もな、初めて自分でやらなあかんくて、芝さんに聞いて、会計事務所紹介してもろて」
「確定申告!?」
 千雪ははたと身体を起こした。
「せや、千雪は自分でやっとるんか? 印税とかあるやろ?」
「そやった………そんなんあるんやった………今度は自分でやらなあかんのや、どないしょ」
「今度はて、今までどうしとったんや?」
 研二は訝し気に尋ねた。
「それが、今までは京助が自分のと一緒に大体のとこやってから会計事務所に渡してくれよったんやけど、今度は京助に頼るわけにはいかんから自分でやらな……」
「何で?」
「や……京助と、さっき普通の先輩後輩に戻ろうて言うてきて、なんにせよ、京助が何でもやってくれよったから、俺、ほんまに京助に依存してもうてて、レシピとかネットで見たらわかるかな」
「普通の……て、京助さんと別れたいうことか?」
 驚いて研二は声を張り上げた。
「まあ、そういうことになるか………もともと京助、K大にいて古典文学やろうとしとったんやで? 笑えるやろ? 父さんの書いたなんかの本に傾倒して、そういう経緯があったもんやから、俺がこっち来るて決まった時に、父さんに頼まれてたらしいんや」
「そう、やったんか?」
 研二は心配そうに千雪を見つめた。
「それやのに俺は京助に依存してもうて……俺、こっちに来ても一人でやっていけるとか軽う考えとった……けどほんまは、心細うて、お前もおらんし……」
「千雪………」
「考えたらお前にも依存しまくっとったんやな。そしたら、都合よう、京助が現れて、俺は………京助をお前の代わりにしたみたいなもんや」
 それは聞きようによっては、研二に告っているようにも聞こえる。
 だが。

 


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