メリーゴーランド267

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「お前、だいぶ酔うとるやろ?」
 この間も千雪はかなり酔っていたのだ。
「俺? まだそう酔うてないで? ああでも、ちょっと一人で帰れへんかも。泊ってってええやろ?」
 わかってやっていないだろうと思うのだが、この時ほろ酔いの千雪の抗しがたい色香に研二は図らずもたじろいだ。
「なんや、そうか。また真由子さん来はるんやな。わかった。帰るわ」
 いきなり立ち上がってふらふらと玄関に向おうとする千雪を研二は慌てて引き留めた。
「来いへん、来いへんて、そんなフラフラの酔っぱらい、一人で帰れるわけないやろ」
 すると千雪はくるりと振り返った。
「ウソばっか。わかっとるわ、もうずっと前から。お前には真由子さんがおるて。一年終わった春休み、メールも電話もてんでそっけないし、ほんまはバイクでお前ンとこ行ってみたんや。驚かそ思て、こっそり。そしたら部屋から彼女と出てきて、お前ら車でどこぞ行きよった」
「千雪、何で声かけんかったんや?!」
 そのことは三田村からも聞いて運命のいたずらに、研二は自分で自分を殴りたくなった。
「そうかて、京助も、そんなん絶対女がおるに決まっとるて、ほんまにその通りやった。俺は何や思て……そのままUターンしたわ」
「その時は真由子と付き合うてたわけやない。彼女が足挫いたいうから、手当てしにうちに寄っただけやったんや」
「そんなおかしな言い訳せんでもええわ。俺は、ああ、女ができたんやったら、俺なんかのこと忘れてもしゃあないて。メチャお前に依存しよった、面倒なダチのことなんか……」
 途端、ボロボロと涙が千雪の頬を伝う。
「せえけど……好きやったから……お前のことずっと………卒業式の時、お前に言わんならん思うとったのに……言うこともできずに……アホや……」
 そんな千雪を研二はもう自分への戒めを解かずにはいられず抱きしめた。
「俺も……俺はずっと好きや。今でもずっとお前だけが好きや」
「俺が酔うとる思うて、適当なこと言わんでええわ。真由子さんがおるのに」
「違う! 違うんや! 俺がアホやったばっかに……お前を好きやのに、江美子とお前の邪魔になるやなんて思うて、勝手にお前から離れた……」
「研二………」
「江美子に何でお前を離したんやて詰られて、目えが醒めた時には、お前にはもう京助さんがおったし……」
 研二は涙を貯めた千雪の顔を覗き込んだ。


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