「真由子は、真由子にも可哀そうなことをしたんや。真由子は俺の中に誰ぞおるに違いないて、ウツのひどいやつになってもて、江美子や菊子のことまで疑うて、せえけどお前のことは言われへんかった……言うたらなんかお前を非難するんやないか思うて、真由子のことよりお前の心配しよった………正直、真由子から別れを切り出された時はホッとしたんや」
千雪の心に研二の言葉は染み入ってくる。
「フン、酷いやつやろ、俺。ほんまに真由子にも子供らにも、親やなんていう資格なんかあれへんね……」
研二は千雪の頬をそっと撫でた。
「ほんまはお前に好きやなんて言う資格もあれへん」
「アホや、研二!」
千雪は研二の背中に回した腕に力を込めた。
「ドアホや! 俺かて好きや! もう離れとうない!」
「千雪」
千雪を呼ぶ声は少し掠れていた。
初めての口づけは甘く、そして深くなった。
そのまま優しくラグに押し倒し、千雪の肌に手を伸ばした研二を千雪は見上げた。
「お前のこと思うてどんだけ年季が入っとるか知らんやろ?」
色を含んだ研二の科白に千雪の目尻からまた涙がこぼれた。
「年季でいうたら俺のが勝つわ」
それでも負けず嫌いの千雪は言い返す。
それから二人はただひたすら身体を合わせ、互いの肌を甘受することに夢中になった。
千雪は自分の中に研二を感じただけで涙がまた零れ、容易く行きついた。
「……もう、離れとうない……」
言葉にならない言葉を千雪が口にした時、研二もまた千雪の名前を呼んだ。
互いを確かめ合い、幾度も愛し合いながら世界の中でただ二人だけの深淵へと降りて行った。
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