メリーゴーランド296

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 俄かに速水は冷や汗が出そうになる。
 だからもう、あの黒歴史はなかったことにしてしまいたいんだが。
「俺も、そう思ってた」
 紫紀はニセコで初めて千雪と出会った時のことを思い出していた。
 きれいな顔をして結構きつい千雪を、紫紀はすぐに気に入った。
 京助の方が夢中になっているようだったが、千雪の方も京助にほだされているらしいと見て取った。
 何より、互いに頑固だが言いたいことを言い合えるならこれ以上にない相手だろう。
「俺が気になると言ったのは、さっきの話、京助が親に縁談がどうのと言われたってのは、うちの洋子ちゃんがたまたま聞いてしまったことを小夜子さんに話して、小夜子さんが千雪くんにその話をしてしまったってこと」
「え?」
 確かに速水も引っ掛かった。
「しかも小夜子さん、二人のことでうちの親が反対したら断固として抗議する、何なら、反対するのならこの結婚はやめにするって言う、って言っちゃったらしい」
「ええ?」
 速水はこの事態を重く見て眉を顰めた。
「小夜子さんとしては千雪くんを後押しするって言いたかったんだろうけど、案外、千雪くん、冷静に周りを見回して結論出したんじゃないのか?」
「それは、小夜子さん、逆効果だったんじゃ………」
 自分のことで万が一、小夜子の結婚がダメになるとか考えたら、千雪ちゃんでなくてももうやめた、ってなるかも。
「案外、京助としては単純な話なのに、千雪くんからすると複雑怪奇に見えてしまったのかもね」
 それを聞くと速水は、やはり自分の言動もネックになっているのではと思わず拳を握り締める。
「小夜子さん、最初の結婚が死別で、割と長いことふさぎ込んでしまっていたらしいからね、彼女の二度目の結婚を自分のためにダメになんかしてもらいたくないよね」
「紫紀さん、他人事みたいに」
 速水は笑う。
「いやほんと、おそらく一度目の結婚はロマンスの結果だったんだよ。しかも結末は死別って、これ以上にない悲劇のヒロインだからね」
「まあ、確かに」
「俺らの場合ロマンスはなかったけど、お互い一緒にいても楽な相手なんだ。特に彼女にとってはね。だからいざとなれば、やめにするくらい言えてしまえるんだよね」
「何からしくもなく弱気に聞こえますよ」
 すると紫紀はふっと笑う。


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