かぜをいたみ73

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「今後一切良太に関わるなとは念を押したが」
 工藤はフンっとせせら笑う。
「ふーん、ほな、工藤さんが念を押したよって、やつら良太ちゃんのこと話さへんかったんやろか」
 何となく解せない気もするが、まあ、中山会の工藤、と男たちは思っているようだから、ビビッてとても名前なんか出せません、ということだろうか。
 三人のオヤジどもには被害者の名前は山本からは知らされてなかったようなので、知らなくてよかったのだが。
「良太ちゃん、どうしてます?」
「やつらが捕まったことで会社に迷惑が掛かったらクビにしてくれなんて言うから、ただでさえ人手が足りないのにその程度のことでクビになんかできるかって言っておいた」
「もちょい、優しう言わはったらどないです? そんな大事な社員やったら」
 呆れて千雪が言い返すと工藤はまた笑っていた。
「笑ろてる場合やないやろ。ちょっとは良太が可哀そうや思わんのんか、あのおっさん、ほんま中身極道やないのんか!」
 電話を切ってから千雪は毒づいた。
 まあ、良太のために金を闇金に渡したことはええとしてもや。
 良太のことが捜査上には一切上がらないことは、渋谷に再度確認をしていた。
 男たちが工藤を恐れて口を閉ざしているのだろうことは何となく推測はできたものの、どうもそれだけだとは思えなかったが、千雪の中で小さなしこりのようになって隅に追いやられた。
 そのうち会員という名目で動画を見ていたユーザーも摘発されたが、中には衆議院議員や警察署幹部の名前もあったことで大きく報道され、当の議員はネットでも必要以上にやり玉にあげられ、警察はまた叩かれた。
 ひどい精神状態へと追いやられたり、学校に行けなくなったりという被害者も何人もおり、中には、とにかくほうっておいてくれ、と警察を拒否する被害者もいるようだと、これも渋谷から聞き知った千雪は、「ったく、あのクソオヤジども、殺しても飽き足らないやつらや」と物騒なセリフを京助にぶつけるのだった。
 やがてマスコミの注目が名優のダブル不倫へと移行し、次第に事件の扱いが小さくなっていった頃、工藤から千雪に連絡が入った。
 千雪の作品の映画化第三弾のクランクインを前に、内輪だけで打ち上げをするのでオフィスに顔を出すようにという誘いというより既に確定していることのようだった。
 そういえばと大澤流のことを思い出したが、あれから別段何も起こるようすもなく、ドラマはクランクインしたらしかった。
「内輪というと、どなたはんがきはるんです?」
「どなたはんなんて者はこない。若いもんが集まって飲むだけだ。うちの連中と。小林先生とぜひお話してみたいってのとかだ」
 

 
 

 


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