「え……?」
途端に不安そうな悠の眼差しが藤堂を見上げる。
「なーんていうわけないだろ」
「ちくしょ、だましやがったな!」
ギャースカ言っていた悠の唇からあえかな吐息が漏れるようになればもう、藤堂のペースだ。
「あ……つい……!」
悠は藤堂の指に操られてからだをくねらせた。
それを押さえつけるように藤堂は身体を重ね、焼けるような熱を共有する。
「だめ……も、たまんない……」
「悠…」
藤堂の声が悠のからだの芯から蕩かそうとしている。
「行かないで…どこにも…」
いつも置いていかれた、皆に置いていかれた、そんな心の奥底にある空洞が時折、見えてしまう。
藤堂は漠然とそんな悠の不安を嗅ぎ取っている。
「悠……大丈夫だよ…どこにも行かないから」
「………ん……」
刹那、藤堂の手を捜してさまよう悠の指を藤堂はしっかりと握り締めた。
ホワイトクリスマスどころか、夜空は寒として晴れ渡り、煌々とした月が顔を見せている。
力尽きて、意識を手放した悠を抱きしめながら、藤堂はカーテンの隙間から見える月ににっこり微笑んだ。
「メリークリスマス」
おわり
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