空はやっぱ青い11

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「あんなカッコいいもんじゃないよ。毎日パトカーで街を回って地道な仕事だってさ、アンジーが言ってた」
 確かにそうだよな、と良太も思う。
「でも、俺、日本でよくアメリカのドラマ見てたから、毎日、銃撃戦が繰り広げられてるとか、思っちゃってさ」
 それを聞くとジミーは笑い、「ああ、銃撃戦はなくても、気をつけた方がいいよ。スリや薬の売人や小悪党はいたるところにいるからね」と念を押すように言った。
「ロスアンゼルスなんかも、いろんな人種がいるし、犯罪が日常茶飯事の地域には近寄らないに越したことはない。このニューヨークでもやっぱりね」
 ジミーが少し真面目な顔になった。
「アンジーはそういうとこも行くのか?」
「もちろん。ただ、アンジーは俺と同じくらい身長もあるし鍛えてがっしりしてる。子供の時から柔道をやってる」
「そうだよね、鍛えてなきゃ、やってられないよね」
 良太は街中でみかけた体格のいい女性の警官を思い出した。
 それこそ自分などあの警官にかかったら、簡単に吹っ飛びそうだと改めて思う。
 参加したドラマは、容疑者の車を追跡するカーチェイスをヘリコプターを使ったり、ドローンを飛ばしたりという空撮があり、ビルが爆破されるシーンや銃撃戦など、スケールの大きな撮影は、良太も思わず手に汗握る体験となった。
 スタントの俳優が怪我をすると、すぐに待機していた医療チームが駆け付けて手当をする。
「ほんと、命がけって感じ」
 休憩中にコーヒーを手にぼそりと呟いた良太に、「何をやるにしたって、みんな命かけてるわよ」と後ろから日本語で声がかかった。
 良太が振り返ると内海が睨むように見た。
「ファンにきゃあきゃあ言われて歌って踊るだけのアイドルなんかが偉そうに役者面してる日本のドラマとはわけが違うわ」
 内海は、日本のドラマはいかにも生ぬるいとでも言いたげに続けた。
 確かにあんなスケールの大きい撮影風景を目の当たりにすると、これまでやってきた小さなスタジオで撮影していくドラマなどが一瞬器の小さいものに思えたりもした。
 しかし、主演を張る宇都宮や山内ひとみ、それにアスカや脇でドラマを支えるバイプレーヤーの演技の深みや凄みも良太はしっかり頭の中に焼き付けてきている。
「まあ、大きな事務所の所属タレントとか、人気だけでドラマに放り投げられたような芸能人も少なくないかも知れませんけど、本物の役者さんの演技に触れると脱帽することはよくありますよ」
 反論するつもりはなかったが、つい、良太はそんなセリフを口にしていた。
「何よ、それ! 私が俳優とか知らないくせにって言いたいわけ?」
 内海は急に激高する。
「え、いや、それかなり曲解してますよね?」
「私だってこっちの俳優で親しくしてる人いるんだから! バカにしないでよ!」
 そう言うと内海はたったか良太から離れていった。
 バカにするようなこと言ったつもりはないのに、と良太は唖然と内海の後姿を見つめた。

 


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