内海のおすすめで、カフェの新メニュー、オーガニックハンバーガーを齧り、オーガニックコーヒーを飲みながら、良太は、「なあ、さっきの二人組、大道具のスタッフだよな」とぼそりと言った。
「あ? ああ、ボブとテッドのこと? GGコーポレーションのスタッフ。大抵うちの関係の撮影とかには顔出してるよ」
そう言うと、ジミーは同じくオーガニックバーガーにかぶりついた。
「でもあの二人、フリーだから、他の事務所にも顔出してるみたいだよ。それにさ」
内海はそこまで言うと、コーヒーを飲んだ。
「それに、何?」
良太が聞いた。
「あんまりいい噂聞かないってか、むしろ胡散臭い噂があって、クスリのやり取りしてるとか、弱みを握って脅したとか」
内海はパクパクとバーガーを食べながら言った。
「それ、ヤバイでしょ」
良太は聞き返す。
「身元調査で引っ掛からなかったのかな」
「会社が契約してるのは事務所だから、GGコーポレーションが保証して送り込んでくるスタッフのことまで疑ってられないでしょ。大人数を扱ってるわけだから」
内海は訳知り顔で良太に言った。
「あ、そういえば、あの二人、確かレイチェルに紹介されて事務所に入ったとかって聞いたよ」
「レイチェルに?」
思わず良太は声を上げた。
何だろう、頭の中がざわざわする。
レイチェルに紹介されて………
「あの女、適当に俺らをあしらいやがって」
ふいに、男らの言葉がよみがえった。
「金づるもできたようだし、ちとふっかけても文句は言わないだろ」
あの女……って、まさかね。
三文推理ドラマじゃあるまいし。
良太は浮かんだ考えをすかさず否定した。
午後はまたドラマの撮影が続き、良太は妙なことには関わらないとばかりに、真剣に参加した。
六時に会社を出た良太は、地下鉄の駅へと向かった。
横断歩道を渡り、地下鉄への階段を降りようとしたその時、白いバンがすぐ横に滑り込んできた。
何気なく振り返った良太は、いきなり腕を掴まれてバンの中に押し込まれ、すぐに車は発車した。
良太は何が起こったかを知る前に、布のようなもので口を覆われたと思うや、やがて意識が遠のいた。
そのようすは周りにいた数人の人間が目撃していたが、わずか数秒のことで誰も何もできなかった。
さらに良太の数分後に会社を出たところでケントも気がつき、タクシーを止めてバンを追った。
運転手に倍は払うからバンを追えというと、アフリカ系の運転手は真面目な顔で頷くとハンドルを切った。
「俺だ。良太が連れ去られた。白のトヨタのバンだ。すぐに良太の携帯のGPSを追ってくれ。今七番街をセントラル方面へ向かっている。どこかで俺と合流してくれ」
ケントは携帯で誰かにそう指示すると、見失いそうになりながらも必死でバンの後を追っている運転手に、弟が胡散臭い連中に連れ去られた、見失わないでくれと説明した。
「まかせてください」
運転手は運転に自信があるようで、車の間を縫うようにバンを追いかけた。
やがて、指示した相手から電話が入り、良太のGPSの位置を知らせてきた。
ケントは何台か前を走るバンを逃すまいとフロントガラスの向こうを睨みつけた。
その間も、いったい何で良太が連れ去られたのかと自問していた。
工藤関係ではそんな気配は全く感じられなかった。
すると、先日の事件関連か?
あれだけ関わるなと言ったのに!
何かを良太が知ったのか?
ケントは憤りと心配で頭をいっぱいにしながら、良太が今どんな状態にあるのかと冷静に考えていた。
どこかに連れて行って、良太を問い詰めるつもりなのかもしれない。
問い詰めた後のことを考えると、焦りが募る。
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