ウイルソンもリードもすっかり佐々木、直子とともに、良太や森村にも打ち解けて、いつの間にか寿司もピザもドーナツもなくなり、写真を撮ろうというので、交代にスマホのシャッターを押した。
ちょっとおどけたリードや森村と全員が和気あいあいとした写真を、食べる前に撮っておいた佐々木の手作りの寿司の写真と一緒に、羨ましがれとばかりに良太が沢村に送ると、ゲームの途中にもかかわらず、おぼえてろよ、てめえ! と言う脅し文句が返ってきた。
翌々日、森村が、良太にくれぐれもと、注意事項をあれもこれもと言い含めて、ちょっと名残惜し気にケネディ空港を飛び立った後、自分の部屋に戻ってきた良太は、ふと、元気でいるよな、と、熱海の両親の顔が頭に浮かんだ。
「ちぇ、里心がついちゃったのかよ、俺」
東京にいる時は忘れているくらいなのに、と思いながら、珍しく母親の携帯に電話を入れた。
どうやら佐々木の手巻き寿司が、子供の頃母親が運動会や遠足に作ってくれた手巻きずしを思い出させたらしい。
良太がセントラルパークの桜がきれいだったことなどを話して、桜の写真を送ると、百合子は、ほんとにすてきねえ、よかったわね、お友達も楽しそうで、といつものようにコロコロと笑った。
母との電話を切ると、猫たちのようすを画像や動画でこまめに送ってくれる会社の鈴木さんからまたラインが届いているのに気が付いた。
「なーたん、ちび…………」
二つの可愛い猫たちが食べたり寝そべったりしている画像を見て、良太は思わず熱いものがこみ上げてくるのを覚えた。
「うう、始まったばっかなのに、末期症状かよ」
良太は滲んだ涙を手の甲で拭い、鈴木さんにお礼のメッセージを送った。
森村が帰ってしまうと、今度はほんとに一人なんだな、などと考えて、まさしくホームシック状態だ、と良太は自分に呆れた。
ついでに、つい最近まで桜を苦手にしていた男の渋い顔を思い出した。
工藤も、桜を愛でるくらいの心の余裕を持ってほしいよな、うん、などと、良太は一人頷いた。
「ああ、もう、明日からまた研修だってのに」
頭を切り替えようとシャワーを浴びて、冷蔵庫から森村がダースで置いていってくれたクラフトビールを一本取り出して栓を抜いたところで、携帯が鳴った。
久々のワルキューレだ。
「はいっ、お疲れ様です!」
つい、気合が入ってしまった。
「森村はそっちを発ったのか」
「はい、明後日から出社するって張り切ってました」
「少しは慣れたか」
工藤の口調が珍しく穏やかだ。
「ええ、まあ。一昨日、佐々木さんや直ちゃんと今年二度目のお花見したんですよ」
「ああ?」
「セントラルパークの桜、今真っ盛りで、佐々木さんの巻き寿司も美味しかったし」
フッと工藤が笑った気がした。
「あ、もちろん、ネットプライムの研修も滞りなく。先日の東洋商事のミーティング、藤堂さんや紫紀さんもいらしたので、なんかニューヨークって感じがしませんでしたよ」
とっくにミーティングの件は報告済みだが、宮下支社長までいつものメンバーが揃ったのに、仕事にも拘わらず工藤の顔もあったらよかったなんて思ったのは口にはしないが。
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