空はやっぱ青い8

back  next  top  Novels


 ただし、ケントはしっかり影武者のように良太に付き添っている。
 そこまでしなくてもと思ったが、東京に帰る森村に、絶対にケントなしで動くな、と念を押された。
 良太が研修中ケントは何をしているのかと思えば、いつの間にか会社のカフェのスタッフになっていた。
 四月の終わり頃には、いよいよ東洋商事ニューヨーク支社でのプロジェクトも動き出した。
 ネットプライムの研修とスケジュールを調整して、良太が真新しいニューヨーク支社に出向くと、そこにはよく知った顔が出迎えてくれて、宮下支社長の顔ですらずっとアメリカ人の中で必死にやってきた良太をほっとさせた。
 その日行われたプロジェクトのミーティングには、綾小路紫紀も顔を見せていて、ずらりと並んだ幹部にはアメリカ人の社員も多い中、それでも日本語が飛び交う空間に、良太はあらためて気合を入れ直した。
「何かやせたんじゃない?」
 ミーティングが終わり、エレベーターの中で、佐々木と一緒に現れたアシスタントの直子に、いきなり言われて良太は思わず苦笑いする。
「やつれたんやないか?」
 佐々木までが心配顔を向ける。
「やもう、英語の渦の中で毎日鍛えられてるから」
「フン、その程度でねを上げてんのかよ」
 思い切り皮肉ったのは、オフでボストンからやってきた沢村だ。
 こちらはそれこそ目一杯トレーニングとゲームに明け暮れて、ぐんとたくましくなったようだった。
「お前のトレーニングとは方向性が真逆なんだよ」
 思わず良太は言い返す。
「たまにジムとかいかねえと、身体がもたねえぜ」
「土日はきっぱり休みだから、言われなくてもやってるって」
 久々の悪態のやり取りも、良太のテンションを上げる。
「土曜日、良太ちゃんとこ行こうと思ってるんだが、いいかい?」
 プラグインの藤堂は相変わらず飄々と笑った。
「はい、お待ちしてます」
 二日ほど前ニューヨークにきた藤堂は同居人でアーティストの五十嵐悠を連れてきたという。
 悠は毎日、美術館に入り浸っているらしい。
 京助に借りた今のアパートは部屋数が多いので、さほど気にはならないが、日本から入れ代わり立ち代わり友人らやって来ていた。
 仕事で来たアスカと秋山はホテルに泊まっていたが、週末良太のアパートに来たアスカのたまっていた愚痴やら何やらを良太は聞くはめになった。
 ゴールデンウイークには、妹の亜弓が大学からの親友というやはり教員をしている木島恵子を伴って一週間ほど滞在した。
 一緒にどこか案内してやりたいところだったが、良太の方はドキュメントの撮影が入っていて、せいぜいディナーをごちそうしたくらいだったものの、良太が仕事をしている間、直子が二人を案内をしてくれた。
 三人はもう何年来の友人のように打ち解けて、亜弓も木島も大いに楽しんでくれたようだし、直子も久々日本人の年齢も近い女子とおしゃべりに燥いでいた。
 さらに千雪が宣言していた通り、ほんとに綾小路京助と千雪もやってきて、京助は学会があったようだが、千雪はどうやら〆切に追われて逃げてきたというのが正解らしく、亜弓らと数日重なったものの、アパートの自分の部屋で執筆作業をしていた。

 


back  next  top  Novels