リフトを降りた時に、森村が前にいる良太にぶつかりそうになったところを、牧が後ろから止めてくれた。
「お二人は先にどうぞ。俺、モリーと一緒に少しずつ降りていきますから」
そういう牧は、ドラマで出番を待ちながら大きな身体を縮こまらせている時とは打って変わって頼もし気だ。
「じゃ、モリー、頑張って」
スッと滑り降りていく工藤を良太は追って滑る。
会社に入って初めてスキーに行った頃は、ほぼ初心者だった良太も、昨年佐々木らにちょっとコーチしてもらったりで、多少はうまくなったつもりでいる。
だが、工藤はブレないフォームでシャープに滑り降りていく。
アラフォーとは思えない身体能力の高さは衰え知らずだ。
「クッソ、負けるかよ!」
幼い頃から野球で鍛えてきたつもりの良太は、必死に工藤について滑る。
だが、工藤ばかりを目で追っていたため、上から猛スピードで滑り降りてきた者に気づくのが遅かった。
シュバッとすぐ傍らを滑り抜けたスキーにハッと身を逸らせた途端、良太はひっくり返っていた。
「ってええ…………」
幸い天と地がひっくり返ったものの、どこも怪我はしていないようだ。
スキーを一旦外して立ち上がり、ウエアの雪を払ってスキーを履き直していると、工藤がすぐ下で止まって声をかけた。
「おい、大丈夫か?」
「はい、平気です!」
良太は声を張り上げた。
良太が体勢を立て直すのを確認すると、工藤はすぐにまた滑り降りていく。
工藤がスピードを緩めて降りているのがわかって、良太は何とかリフトのスタート地点まで滑り降りて工藤の横で止まった。
「怪我はないか?」
「ああ、全然」
四人乗りのリフトに二人で乗り込み、リフトが上がっていくうち、牧と森村が見えた。
「え、すげ、モリー、もう滑れるようになってる」
思わず良太が声をあげた。
ボーゲンもクリアしたらしい森村は、ゆっくりだが牧についてパラレルターンで滑っている。
「体幹が鍛えられているんだろう。バランス感覚が並じゃない」
「はあ………時々忘れるんですけど、モリーって、シールズだったんですよね」
一見して、その辺の学生にしか見えない森村だが、良太には考えもつかないトレーニングを積んでいたのだ。
それに今の日本では予想もつかない体験もしているはずだ。
しばし感慨深く森村たちを見送った良太だが、すぐによく晴れた冬の山々に目をやって、「すんげ、絶景ですね」と声に出した。
すると工藤はフッと笑い、「たまには自然に埋没するのも悪くないな」と呟いた。
「ですよね!」
呑気で楽し気な良太を見ていると、工藤も笑みを浮かべずにいられない。
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