春立つ風に11

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 わらわらと寄ってきた猫たちをひとしきり撫でてやりながら、こうして猫たちに会おうと思えば会えるのも有難い、と思う。
 さっきより幾分シックなスーツとタイに着替え、ツイードのコートを羽織る。
「ま、いっか」
 鏡の中の髪型はいじっても大して変わらない。
 ましてや童顔も。
 小林千雪のマネをしてメガネでもかければ少しはマシかもとは思うのだが。
「っと、遅れないようにしないと」
 良太はそそくさと部屋を出ると、デスクに寄り、ブリーフケースを持ってオフィスを出た。
 表参道で銀座線に乗り換え、ランドエージェントコーポレーションのオフィスが入っているプリモ虎ノ門ビルへと地下道の出口を上がった。
 エントランスのドアをくぐると一階はアーケード街になっていてカフェや銀行などが入っており、真ん中にエレベーターがある二階へのエスカレーターがあった。
 良太がエスカレーターを目指して歩き出そうとすると、ちょうどエスカレーターから降りてきた年配の婦人がカートを引いてこちらに歩いてくる。
 と、その時、良太の後ろからきた大柄の男が早足で良太を追い抜いたのと同時に年配の婦人がヒールを絨毯に引っ掛けたのか、少しよろめいたため、男の腕が婦人に当たって、婦人は膝から倒れ込んだ。
「え、大丈夫ですか?」
 品のいいスーツ、白髪をきれいにまとめた女性に、良太は駆け寄った。
「すみません、大丈夫です」
 女性に手を貸して立ち上がらせると、良太は思わず、エスカレーターで上がって行く男に向って怒鳴った。
「ちょっと! あんた! ぶつかっといて何も言わずに行くとかってないだろ!」
 上りエスカレーターにはたまたまその男しかおらず、男は良太を振り返った。
 上背のある体格のいい男はサングラスの奥から二人を見下ろした。
 見るからにでかそうな男だ、こんなところで喧嘩吹っ掛けるようなマネ、まずいんじゃね? と思った時はもう遅かった。
 一旦上まで上がったその男は、徐に下りエスカレーターに乗り換え、一段飛ばしで降りてきた。
 たったかやってきた男は思った以上に背が高く、威圧感を感じた。
 ヤベ、またやっちゃったかな………。
 ガタイのいいサングラス男って、まるでマフィアかなんかみたいじゃん。
 ってか、マジ、やのつく輩だったりして、メンドウなことになったらまずいぞ。
 今日のアポ逃すと、いつ会えるかわからないってのに!
 それよりまず、この女性を出口まで連れてって……。

 


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