「これ………」
良太は千雪に携帯の画面を見せる。
「何やて?!」
携帯を覗いた千雪も絶句する。
動画の内容は、奈良県生駒市の国道一六八号線沿いで車が炎上し、一人の遺体が見つかったというもので、炎上したのは昨夜で、車は京都市在住の柏木珠紀弁護士のものとみられ、さらに近くに柏木弁護士のものとみられる携帯が落ちていたことから、京都府警は柏木弁護士が何らかの事件に巻き込まれた可能性もあるとみて、遺体の身元の特定を急ぐとともに、事件、事故両面から捜査を進めている、というものだった。
「柏木弁護士が殺された……? ってことはやっぱ大石が?」
良太は少し青ざめた表情で千雪を見た。
「警察はかなりの確率でこの遺体が柏木弁護士て断定しとるんやろけど」
千雪はしかしどうにも腑に落ちないという顔で小首を傾げた。
「どこ行ったんや? 良太のボールペン」
千雪の呟きを聞くと、「確かに。でも柏木弁護士が殺されたということになると、一緒に燃えたってことじゃ……」と良太はガクッと肩を落とす。
「わざわざ、柏木に取り替えさせたボールペン燃やしよったら、何の役にも立たんやろ」
千雪の言葉に良太は頷いた。
「確かに……。じゃ、今、俺のボールペンって、大石が?」
「うーん、どうやろ」
千雪は煮え切らない返事をする。
割と良太の手に馴染んでいたボールペンがそんな男の手にあるとか、良太はすごく嫌な気がした。
工藤が持っているからこそ、何も言わなかっただけなのだ。
他の誰かならとっくに返してもらっている。
「あの、何かあったんですか?」
しばらくして竹野が声をかけた。
竹野でなくても千雪と良太が二人でこそこそと小声で、しかも難しい顔を突き合わせていたら、変に思うだろう。
「ああ、いや、ちょっと、面倒ごとが起きて……すみません」
良太は椅子に座り直して、俄かづくりの笑顔を向けた。
隣の千雪も座り直したが、こちらは無言で、頬杖をついたままだ。
良太は次のロケ地の話を持ち出して、その場を取り繕ったが、相槌を打っているものの竹野も何かしっくりこないようすだ。
十分程経った頃、千雪の携帯が鳴った。
「おう、今、どこや? わかった、すぐ行くわ」
千雪は立ち上がった。
「すみません、ちょっと所用ができたんで、お先に失礼させていただきます」
それだけ言うと、千雪はたったかレストランを出て行った。
しばしその後姿を良太は目で追ったが、すぐに竹野たちに向き直り、「では我々もそろそろ出ますか」と言った。
レストランを見回すと、監督や他のクルーは既に店を出て、部屋に戻ったか或いは二次会にどこぞへ繰り出したに違いない。
「あーあ、もっと小林先生と話したかったのにな」
エレベーターホールで竹野がぼそっと言った。
back next top Novels
