「ドラマで弊社が所有している『Gatto』を使用したい、ということでしたね?」
「はい、ドラマの内容は、医師と刑事がタッグを組んで事件を解決していくというアクションを交えたクライムサスペンスなんですが、老若男女問わず楽しんでいただける娯楽作品を作りたいという、脚本家の坂口さんの意向で、うちの工藤がプロデュース、今秋NBC関連の全国ネットで木曜十時の放映予定となっております」
「アクションの娯楽作品ですか。面白そうですね」
良太が言ったん言葉を切ると、野口が言った。
「はい、宇都宮俊治と小笠原祐二がダブル主演でバディを組みます。医師で格闘技の達人、椎名尊(たける)を宇都宮、破天荒で掟破り常習の刑事、小椋壮太を小笠原祐二、という設定で、この二人がいつも顔を合わせるのが、リッチでシックなバー『Cat』です」
「なるほど、そのバーがうちの『Gatto』というわけですね?」
野口はどうやら面白そうだという顔をしている。
「はい。実際に飲み物を出したり、というカウンターなどはセットで行く予定ですが、外観や、エントランス、全体のショットなどを使わせていただければと。もちろん、業務に差しさわりがないよう、営業時間外での撮影となります」
その時、海老原が立ち上がった。
何だろう、と良太は海老原を見上げた。
「コーヒーでいいかな?」
構えた良太に相変わらず笑みを浮かべた海老原が聞いた。
「はい、どうぞおかまいなく」
「ブラックでいい?」
「あ、はい」
すると海老原はコーナーに設置してあるコーヒーサーバーで三人分のコーヒーを取っ手付きのカップに注ぎ、それぞれの前に置いた。
「ありがとうございます」
「それさ、どうせやるんなら、実際カウンターも使って酒出したりとかの方がいんじゃない? やっぱりセットだとどうしても似せてるだけの感じが半端ない気がするし、そもそも雰囲気を出したいからうちの店を使うんでしょ?」
今まで黙って聞いていた海老原が前のめりに口を出してきた。
「はい、ネットでしかまだ拝見したことはないのですが、画像からドラマの中で椎名尊が行くとしたらこんな店だなと直感的に思いましたし、もし使わせていただけるのであればとは思いますが、実際カウンターでのやり取りまでとなると、営業に差しさわりが出てきてはと」
「いや、そこはプロだし、うまくやってくれると思うけど、どうしてもの時は、なんなら貸し切りってことで、期間を決めてやっていただければ」
「え、はい、もちろん、そうしていただけるのであれば、大変ありがたいですが」
結構評判いい店ってことだし、貸し切りって、めちゃ吹っ掛けるつもりとか?
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