良太は海老原の出方が気になった。
「今秋のドラマってことは即使いたいってことなわけ?」
「あ、出来得る限り、で構いませんが」
「しかし、今秋放映でメインのシーンに使うんなら、もうとっくに店とか決めてるもんなんじゃないの?」
海老原は軽い口調で当然ながらの疑問をぶつけてくる。
「はい、…実は予定していた店がいきなり閉店することになってしまいまして、脚本家の坂口が推していたとはいえ、もっと調査をして向かうべきだったのですが」
良太が言うと、海老原は「なるほど、うちは二番煎じだったわけだ」などと返す。
「いや、決してそういうわけでは……」
「広瀬さんが選ぶとすればうちだったってことだろう?」
いちゃもんをつけてくる海老原に、野口が割って入った。
「俳優さんからの意見も参考にさせていただきましたし、使わせていただけるものでしたら是非にと、考えております」
俳優というのは、まあ、アスカのことだが。
オーナーである海老原がそう簡単にはうんと言わないのだというのは、秋山の意見だ。
おそらくこうやって何か少しでも引っ掛かりがあれば、海老原が難癖をつけるのだろう。
良太あたりがピンときた、程度では首を縦には振らないわけだ、とダメモトではあったので、答えがノーなら、それこそ早いとこ二番煎じの方にあたらなくてはならない。
と、その時ドアがノックされて、金髪の女性が顔を見せた。
野口を名指しで、ジェフがすぐに電話に出ろとさっきから何度もかけてきているのだが、と英語で言った。
野口は後でかけると言っておいてほしい、というと、女性は、了解、せっかちね、あなたのハニーは、というような返事をしてドアを閉めた。
あなたのハニーって聞こえたけど……。
良太は頭の中で思ったが、英語はわからないという顔をして、「こちらにこのプロジェクトについてまとめてありますので、よろしくお願いいたします」と良太がまとめたドラマのデータを差し出した。
とにかく、はやいとこキャスティング進めないと。
既に良太は頭の中で、次の候補にアポを取る算段をしつつ、腰を浮かしかけた。
「広瀬さんは、実際店に行ったことがないんですよね?」
そこへまた海老原が突っ込みを入れた。
まったくもってそうなのだ。
何しろ、今朝聞いたばかりでアポ入れたら今日しかこの人がいないからって言うし。
良太は心の中で言い訳をする。
「はい、もちろん、是非、お店にも伺うつもりでおります」
次は、順序が逆じゃないかとか言ってきそうだ。
「じゃあ、今夜、ご一緒にいかがです?」
しかし海老原は思わぬ変化球を投げてきた。
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