車はかなり下に置いていたので、京助が取りに行った。
「あ、可愛い!」
檜山は千雪の連れているシルビーを見つけて駆け寄った。
「千雪のワンコ?」
しゃがみ込んで、檜山は犬目線で撫でまくっている。
「シルビーや」
「シルビー! きれいな子だね」
「ホテル、ペットOKで助かったわ」
千雪が言った。
「まあ、千雪さん、その子連れ歩くって言ってましたし」
良太は宿を抑える時、一応それも考慮した。
「今夜は顔見せで飲み会になるで」
「はあ?」
良太は怪訝な顔で千雪を見た。
「顔見せって、何です?」
「そら、親睦を深めるためやろ? 前回もお世話になったことやしな」
「はあ、それはそれでお礼をしようと思ったんですが」
「あいつら、金とか受け取らへんから、ええんやない? 今回の旅行でちゃらや」
「でも、今回もお世話になることですし………」
良太は口ごもる。
波多野本人でなくても、その弟子なる森村が同行していて、どうやら魔女オバサンがまた現れる可能性大のようなことを言っているのだ。
「何かあったのか? 良太、顔が暗いぞ」
檜山が急に深刻そうな表情になった良太を心配している。
「うん……いや、とにかく、今晩、そういうことなら買い出しに行かないと」
良太が顔を上げた。
「それやったらもう準備はでけてるし。お前ら何か欲しいもんがあったら寄ってくけど」
千雪が言った。
「ほんとですか? ありがとうございます」
さすが、手回しがいい。
良太は苦笑した。
どのみち京助が動いたんだろうけど。
やがて京助の運転するレンジローバーが上がってきて、Uターンすると、早く乗れ、と運転席から京助が言った。
千雪はシルビーを連れているので、後部座席に乗り込み、続いて檜山もその隣に陣取った。
げ、俺、助手席かよ。
「お願いします」
一応声をかけて良太も乗り込んだ。
口が悪いだけで、京助が面倒見がよく、悪い男ではないことは今ではよくわかっているつもりだが、何せ、出会いの時の印象が悪かったせいで、良太は未だに京助を苦手にしている。
工藤が千雪を追いかけまわしているかのような口ぶりで、嫉妬を顕わにして剣呑な態度を取っていた。
確かに、工藤には脛に傷があるらしいし、千雪には甘いが、今さらセットのようになっている京助と千雪の間に割り込む余裕はないだろうと、良太は思うのだ。
俺が思いたいだけなのかもだけどな。
ホテルは思いのほかハイグレードで、何より広い。
「うわ、いいね~、温泉がいくつかある!」
檜山は京都まで日比野や浅沼らと一緒に新幹線を使い、あとは日比野が借りたレンタカーでロケ現場まで来ていた。
荷物は京助がラゲッジに放り込んだ小さ目のキャリーバッグ一つで、スーツなどを入れている良太の荷物の方が大きいくらいだ。
良太のキャリーバッグは既に京助が部屋に置いてくれていたので、身一つで部屋に入った。
「京助さんらの部屋の方が大きいんですけどね、ワンコ連れだから」
「十分広いよ。日本にしては」
桧山の言葉に良太は笑った。
「海外と比べないでくださいよ」
「先に温泉行こ! この露天風呂って入りたい!」
檜山に急かされて、良太は露天風呂へと向かった。
どうやら考えることはみんな同じなようで、既に露天風呂は、屈強な男たち数人が陣取っていた。
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