月鏡44

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 沢村は車で帰宅途中だというので、駐車場に着いたら車から電話をくれるように言うと、一応、工藤にも報告した。
 工藤は、帰るまでに小田に怒鳴り込めって言っておけ、と息巻いて電話を切った。
 はあ、と一つ溜息をつくと、良太はバスルームをいったん出た。
 途端、ガハハという笑い声に、ほんとに陽気な面々だと良太も思わず笑みを浮かべる。
 いつぞやの工藤の事件の時には重苦しい状況にあったせいか、皆がいかつい顔をさらにいかつくしていた気がする。
 白石や辻も今夜はずっと笑顔を見せている。
 加藤と京助はある程度食べると、あとは飲む方に専念しているようだ。
 しばらくして、手の中の携帯が鳴ったので、良太はまたバスルームに戻る。
 沢村は駐車場で車からかけていると言った。
「うん、こないだ、言っただろ、遠野さんが、お前の部屋とアスカさんの部屋にカメラ仕込んだって」
 良太は、沢村を探っていた男が沢村の部屋に盗聴器と盗撮器を仕掛けたらしいことを告げた。
「クッソ! だったら、早いとこ告訴してくれって小田先生に言ってくれよ」
 工藤同様沢村もいい加減焦れているようだ。
 もう少し我慢するように言ったものの、良太としても腹立たしいし、早く何とかならないかとは思うのだが、自分ではどうにもならないのがもどかしい。
「で? そもそも、良太何に襲われそうやて?」
 千雪の隣に戻ると、足元のシルビーを撫でながらいきなり良太に切り込んできた。
「え、いや………」
「工藤さんが、こいつらを用心棒にするほど心配しとるいうんはただ事やないやん」
 どうせ工藤の冤罪事件の時にも協力してもらった面々なので、この際言ってしまっても構わないかと、良太も思うのだが。
 しかも、波多野の弟子も千雪さんならよし、みたいなことを言っていたし。
 だが、千雪ならよしでも、彼らはどうなんだろう。
 うーん、どう説明したものか。
「実は………ハロウインの夜に魔女オバサンに捕まりまして…………」
「へえ?」
 千雪はバカにしたような顔で良太を見た。
「いや、冗談じゃなくて、ほら、あのパーティのあと、帰ろうとしたら………」
 良太は老齢の女性が困っていたので部屋まで連れて行ったら、そこで魔女が正体を現した、とかいつまんで話した。
「ほお、何、魔女の隣には狼男とフランケンシュタインとドラキュラがおったと」
「そう、なんです、まさしく、俺が魔女に何か言うと狼男がくわっと………その時は、何とかタンカ切って部屋を出たんですけど…、タクシー拾おうとしたらこれがまたゾンビタクシーで、いつか赤坂で助けてくれた鉄拳マンが運転手で………」
 そこで千雪もあらかたわかったようで大きく頷いた。
 以前、工藤と一緒に千雪と赤坂の料亭で映画の打ち合わせをした帰り、半グレ風な連中に襲われたことがあったが、そこへ風のように現れて半グレどもをバッタバッタと倒して、また風のように去っていった男がいたことを、千雪も忘れてはいないようだ。
「なるほど……そいつはまた難儀やな………でもなんでまた良太に近づいてきよったんや?」
「俺が聞きたいですよ。工藤さんもそれこそアイアンマン並みに怒っちゃって。でも、お灸をすえておくって鉄拳マンが言ったのに、また影武者とか使って魔女が動いてるって、鉄拳マンの弟子がADの中に一人いて、そう………」
「森村?」
 口を挟んだのは檜山だ。

 


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