「次、『今ひとたびの』で行く予定です」
きっぱりと良太は告げた。
「行く予定て、こないだ、ドラマ終わったばっかやろが」
案の定と千雪は文句を言う。
「来年の話ですから、キャスティングはまだですけど。大澤さんらのスケジュールは一応おさえてあります」
千雪はじっと良太を見た。
「お前、やっぱ工藤さんに似てきよったな」
「ちょ、だからやめてくださいよ、これはただの仕事です」
千雪と良太がそんなことを言い合いながら歩く後ろを京助がついて行く。
焼き肉談義に花を咲かせつつ後ろをちんたら歩いていた強面四人だが、ふいに白石が加藤の腕を肘でつつく。
「確かに、カッコよかったわ!」
白石がこそっと言った。
「だろう?」
フフフと笑う白石に、加藤がドヤ顔を向ける。
「でぇも、ダメじゃん。あの二人の間に入るスキなんかないわよ」
そんな加藤を見て、白石はフウッと大きくため息を吐いた。
「え? 何だよ、あの二人って」
聞き返す加藤に、白石が、「ほんとにあんたって鈍感」と眉を顰めて言い捨てる。
「どういうことだよ?」
加藤には白石の言う意味がとんとわからないようだ。
「だから、社長と良太ちゃん。工藤さんは良太ちゃんが心配で仕方ない、良太ちゃんは無理をする工藤さんが心配で仕方ない」
「はあ? って、まさか」
断言する白石に、一呼吸おいて白石の言葉を理解したらしい加藤が首を振る。
「できてるわよ、あたしの目はごまかされないわよ」
「うっそだろ?」
目が点になる加藤に、白石は続けた。
「大体、あの極妻が何で良太ちゃんにペンダントを渡そうとしたか、考えてみなよ。もとはといえばあのネットに出回った動画、見直してみたの」
「工藤さんが怒ってるやつかよ?」
加藤は自分の携帯を取り出すと、白石の言う動画を表示させた。
「その前に、工藤さん、良太ちゃんが倒れてるところへ駆け寄ってるじゃない? それを見て極妻も察したのよ」
「ほんとかよ」
加藤は千雪とまだ何やらブツブツ言い合っている良太を見た。
すると二人の会話を後ろで聞いていた辻がくくっと笑った。
白石が振り返って、「何笑ってんのよ」と凄んだ。
「いや、残念やったな、せっかく理想のダーリン現るか、やったのに」
「うるさいわよ。まあ、良太ちゃんなら許すっきゃないわ」
そこへビル風が勢いよく吹き抜けた。
「きゃあ! 寒!」
白石がジャケットの前を掻き寄せる。
「すぐはいれるそうです」
目当ての焼き肉店に着くと、良太が後ろを振り返った。
店内は混んでいたが、良太が前もって予約を入れていたので、すぐにテーブル席へと案内された。
いかつい男集団が通ると、すぐに多くの視線が注がれたが、男たちは今更そんなことを気にする連中ではない。
「食うで!」
辻の宣言を合図のように、男たちはすぐに健啖ぶりを発揮し始めた。
世の中は今年もやがて来る年の暮れへと突入しようとしていた。
沢村の一件は、小田弁護士のお陰で何とか一件落着となったことで良太はひとまず胸を撫で下ろしたのだが、その後の沢村と佐々木の間にひと悶着起こったことはまた別の話となる。
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