つまり宇都宮は、古くからのファンだけでなく、現役女子高生のハートも掴んでしまう俳優ということだ。
「宇都宮さんて、デビュー当時から今まで、ずっと人気俳優だったってことですよね?」
良太は言った。
「持ち上げてくれても何もでないからね」
宇都宮は良太ににっこり笑う。
「そういえば、今は郷里のことをどう思っているんですか?」
さっき宇都宮は高校までは寒くて陰気な街だと思っていたと言っていたが。
「ああ、そうだね、寒くて陰気な街って印象はやっぱり変わらないけど、今は外側から見てる感じじゃない? 変わらないのがあの街の魅力なのかなって」
「釧路湿原、前に冬に撮影に同行したことがあって、寒いなんてものじゃなかったけど、タンチョウ見た時の感動ってちょっと何て言っていいかわからないもんでしたよ」
良太の言葉に、宇都宮はまたフッと笑みを浮かべた。
「それ、俺も思った。なんかのロケで行ったんだよ、何で冬にあんな陰気なとことか行く前は思ったけど、実際行ってみて初めて自分の郷里に感無量だったな」
「釧路湿原! 私も行ってみたい!」
美琴が言った。
「何かロマンチックな響きよね、釧路湿原って」
ゆかりと鈴木さんが頷いた。
「いやあ、今は何かSLで雪景色見たり、冬の湿原を散策とかって観光に力入れてるみたいだけどねえ」
宇都宮があまり面白くもなさそうに言う。
「素敵じゃない! 雪景色の中のSL!」
ゆかりが言った。
「でも冬に湿原散策とか、団体じゃなきゃ暗いって」
宇都宮が小首を傾げる。
「団体で行けばいいんでしょ? ねえ、良太ちゃん、次の慰労会は、冬の北海道ツアーなんてどう?」
ゆかりの提案を聞いただけで引いた良太は、苦笑いする。
「はあ………」
「北海道ならやはり夏に、美瑛とか富良野とかがお勧めですよ」
宇都宮は良太の心の内を察して言った。
「旭川動物園! 行ってみたい!」
思い出したように亜弓が宣言する。
「なんか、動物本来の行動に即したユニークな動物園なんでしょ?」
「あ、それ、いいんじゃないか?」
宇都宮が賛同する。
「小樽なんかも行ってみたいわ。ほら、前に良太ちゃん、ロケで行った時、オルゴール買って来てくれたでしょう? 運河のある街並みも素敵みたいだし」
鈴木さんが言った。
「ああ、あの時……。そうですね、仕事で行ったからあまり観光とかできてなかったし、俺もまた行ってみたいですね」
思い出すだけでも面倒なロケのメンツだった。
超我儘な山之辺芽久やハブとマングースかという監督と脚本家のいがみ合いのせいで、撮影が大変だったのだ。
「それ、あの時だよね? 坂口さんと工藤さんとで『田園』の話を持ち込んできた」
宇都宮がその時のことを思い出して一人頷いた。
「あの時、監督と脚本家のそりが合わなくてドラマのロケ大変だったんだよね? 良太ちゃん二人を説得するの」
「ハハハ……、もうああいうのはごめんです」
「でもさ、『田園』のキャスティング、結局良太ちゃんの意見でほぼメイン決まっちゃったんだよね」
宇都宮が仕事の内々のことを言い出したので良太は焦る。
「宇都宮さん、ちょっとこんなところで」
「まあ、いいじゃない? 終わっちゃったことだし、蓋を開けてみれば坂口さん、良太ちゃんに全面的にキャスティングまかせちゃって、ま、それがいい感じで終わったからさ。工藤さんの懐刀ってだけじゃなくて、次のドラマでも坂口さん、良太ちゃん頼みだから」
「やめてくださいよ。俺のことはいいですから」
良太は宇都宮の話を遮るように言った。
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