「フフ、でも、良太ちゃん、八面六臂の活躍でしたもんね、去年も」
美味しいわとケーキを堪能していた鈴木さんが今度はそんなことを言う。
「うちの祐二も良太ちゃんのこと、すごく信頼してるみたい。ほら、前の事務所でギャラ持ち逃げされちゃったでしょ? それから結構人を信用できなくなっちゃってたんだけど、今はすっかり前の能天気な祐二よ」
ゆかりまでが良太を持ち上げるような話をする。
「だから、俺のことはもう……」
「俺も良太さん目指して頑張ります!」
今度は真中が宣言するのに、「よしよし、お前だけだよな、俺のことさん付けで呼ぶの」と良太はぼやく。
途端どっとみんなが沸いた。
美琴が宇都宮にドラマの共演者の話を聞くと、皆がその話に盛り上がっているのを見て、宇都宮に先を越されないうちにと、良太は先に会計を済ませた。
ぼんやりしてまたしても宇都宮が支払ったりなどということになっては、良太の面目もたたない。
田之上から宇都宮に連絡が入ったところでお開きとなり、皆が店を出た。
「あ、良太ちゃん、また鍋パ、やるからね、連絡する」
みんなでタクシーを待つうち、田之上が運転する車が宇都宮の前で停まると、宇都宮はそう言って車に乗り込んだ。
宇都宮を見送ってすぐ、タクシーが停まったので、美琴とゆかりを先に乗せ、真中を一緒に行かせた。
続いて停まったタクシーに亜弓と鈴木さんを乗せ、良太は助手席に乗り込んだ。
「Aホテルまでお願いします」
後ろでは亜弓と鈴木さんが宇都宮をまたさらに見直したと、ああでもないこうでもないと楽しそうに宇都宮談義を始めた。
まあ、楽しんでくれたんならいいよな。
にしても鍋パって、また?
すっかり鍋にはまったらしい宇都宮のことを良太は良太で思い出して笑う。
「ねえ、今夜ご飯一緒に食べる? お父さんたちと日本料理の店に行こうって言ってるんだ」
ホテルに着いて皆でエレベーターに乗ると、亜弓が良太に聞いた。
名前さえ言えば、ホテル内のどのレストランやラウンジ、バーを利用しても会社に請求が来るようになっている。
「うーん、間に合えば。いくつか確認することあるし」
携帯でラインを確認しながら良太は答えた。
「お兄ちゃん」
エレベーターを降りると、それぞれの部屋に向かう途中、亜弓が良太を呼び留めた。
「ん?」
隣の部屋のドアを開けようとした良太は振り返った。
「何か、お兄ちゃん、ちゃんと仕事してるんだね」
「何だよ、それ。してるに決まってるだろ?」
「私、お兄ちゃん、パシリみたいな感じで使われてるだけなんじゃないかなんて思ってたけど、今日も撮影の人や俳優さんやいろんな人に声かけられて、信頼されてるんだって見直しちゃった」
亜弓の言葉に、良太は去年自分が地に足がついてないとか考えて、これが自分の仕事だと両親や亜弓に胸を張って言えない、なんて思い悩んだことを思い出した。
「正直、パシリみたいな仕事だよ。仕事を円滑に動かすための仕事ってか、そんな感じ?」
「さっき宇都宮さんにもお兄ちゃん頼みだ、みたいなこと言われてたし」
「宇都宮さん、大げさなんだよ。坂口さんていう脚本家もさ、何かトラブると俺に何とかしろって押し付けてくるし、こっちはだから振り回されてる」
良太は笑いながらはあとため息をついてみせる。
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