沢村と佐々木はちゃんと付き合っているから、それでいいのだ。
けれど、工藤と自分の関係って付き合っているっていえるんだろうか、と考え始めると、良太はぐるぐると思考の渦に埋没してしまうのだ。
良太はしばらくタブレットに向かい、家族単位で渡す土産のリストを作っていた。
ワインや吟醸酒、紅茶セット、スモークサーモンやハムなどのセットやクッキーの詰め合わせなど、今日までにホテルのギフトから二セットずつ、選んでもらっている。
明日、解散の前に会議室を借りて、良太だけでなく手の空いた社員やタレントに手伝ってもらって、土産を渡す手はずになっている。
「何だ、また仕事やってるのか」
戻ってきた良一が声をかけた。
「まあ、俺がこの会の元締めみたいなもんだからね。どうだった?」
「おう、映画なんぞ久々で、百合子も楽しそうだったぞ」
はとバスツアーのあと、両親は二人で映画を見に出かけたのだ。
おそらく若い頃以来のデートだったのではないかと、良太は思う。
機嫌が良さそうな良一に、「風呂、ゆっくり入ったら? 夕飯までまだ時間あるし」と良太は言った。
「お、そうだな」
良一と百合子は幼馴染で中学まで同級生で、高校の時に付き合い初めた頃からのこともかつての隣近所に住む昔からの知り合いはちゃんと覚えていてくれたらしい。
良一が家や工場を取られて夜逃げ同然で一家で熱海に移り住み、最近ようやく墓参りに行った折に、隣近所にも顔を出した時にはみんなが集って二人を歓迎してくれただけでなく、水臭いとなじられたという。
そんな両親に今回少しでも楽しく過ごしてもらえたなら、良太としてもこんなうれしいことはない。
ホテルに入っている老舗の日本料理店で、良太は両親や亜弓と懐石料理を前に酒を酌み交わし、一家団欒の時を過ごした。
能天気と良太が言ったように、この両親はどこにいても苦にするよりは面白おかしく変えてしまうような二人で、熱海での仕事の話、変な客の話、釣りの話と話し始めれは尽きることもない。
「そういえば映画、どうだった? 何見たの?」
「お父さんはリバイバルの『日の名残り』が見たくて、あたしは『ジョンウイック』が見たくて、じゃんけんであたしが勝ったの。カッコよかったわ、キアヌリーブス!」
亜弓が聞くと、百合子がそれこそ女子高生のようにはしゃぐ。
ハハハと笑う良太は、そういえば、百合子はぱっと見優し気で可愛いが、昔からアクションが大好物だったことを思い出す。
高校時代から二人でよくあちこち映画を観に行ったという話は聞いている。
「亜弓は映画とか見ないの?」
百合子が聞いた。
「うーん、たまにネットで見るくらい? あんまり実際観に行くことってないなあ。あ、でも今度宇都宮さんの映画、絶対観る」
さっきお茶をしていた時に、宇都宮主演の映画が秋に封切りという話になったのだ。
「良太は?」
「俺? いや、どっちかっていうとほら、観るより創る側の仕事をしてるし、あんまり時間なくて、試写くらい?」
百合子に聞かれて良太は空笑いする。
「そう、映画もだけど、仕事関連で、舞台? 能を観たよ。あと、シェークスピアとか読まなきゃだし、ビバルディもいろいろ聞かなくちゃだし」
ついつい思い出してはあ、と良太はため息をつく。
すると亜弓がケラケラと笑う。
back next top Novels
