霞に月の6

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 つまり業界人間だけではない、人気スラッガーまでが、竹野の言うゲイってことになるわけだが。
 まあ、彼女の場合、宇都宮が俺に言い寄っていたと思い込んでいるくらいだから、だから何? くらいな反応だとは思う。
 そういえば、沢村、佐々木さんのお母さんに、お試し期間とか言われていたようだが、それはどうなったんだろう。
 こないだ電話で話した時は上機嫌だったから、お許しをいただいたとか?
 まあ、沢村はいいとして、やっぱ、問題は千雪さんだよな。
 良太はあれこれと思考を飛ばす。
 竹野は推理作家小林千雪のファンということで、今回もドラマ出演を志願したくらいだし、対談までやっている。
 素の千雪に会ったらまた見解が変わるかも。
 良太も世間一般で言われている小林千雪像とはかけ離れたあまりの別人級に良太も詐欺だと思ったものだ。
 背後霊の京助も当然のようについてくるだろうし、『やさか』の研二や三田村、辻といった千雪のご学友も顔を見せるだろう。
 あ、加藤さんとかにも一応連絡しておくか。
 忘れないうちにと、携帯を取り出して、良太はちょくちょく世話になっている猫の手商会も連絡リストに加える。
 東洋グループのCM制作に関わっていた代理店プラグインの藤堂からも今年もお花見やるよね、と連絡をもらっている。
 たかだか会社の裏庭の桜なのに、いつの間にか一大イベントみたいになってしまった。
 いずれにせよ、せっかく内輪で集まるのだから、ゲストに変に気をもませるようなことは避けたいところだ。
 当の桜は日に日に蕾がほころんで、井上のライティングも手伝って夜の花はひどく幽玄に見える。
 ああ、そうだ、匠にも連絡しておかなければ。
 花と言えばやはり能楽師だろう。
 結局花見は天気予報を加味すると二十七日で決まりそうだった。

  
 
 五年ぶりのWBC優勝だ! と日本中が騒いでいたし、良太も手に汗握って夜な夜なテレビに向って、行け~! 打て~!と叫び続けていたものの、果たしてほんとに決勝戦まで行くことになってみると、本当に現実かと頬をつねりたくなった。
 しかも口にしてはいたが、実際良太はフロリダに飛ぶことになり、取るものとりあえずの強行軍で、市川アナとともに現地に向かった。
 思いもよらない形で大リーグの選手と日本の精鋭とのゲームを目の当たりにできることになった良太はまさしく感無量、仕事だということを忘れそうになるほど気を入れて取材に走り回った。
 優勝の瞬間を目に焼き付けたものの、スケジュールぎちぎちであとは市川やディレクターに任せてとんぼ返りした良太は花見の宴当日まで息つく暇もなく動き回っていた。
「明日、工藤帰れるのかな」
 花見を明日に控え、風呂から上がってタオルで頭を擦りながら良太は呟いた。


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